シゲ&水野幼馴染パラレル 8
寒い寒いと言いながら一向に厚着をする気配の無いシゲの行動に、竜也はいささか呆れ気味だった。
今朝はさすがにブレザー一枚では寒くて、母に所在を聞いてコートを引っ張り出してきた竜也だったが、シゲはかろうじてブレザーの中にセーターを着込んできた程度。
それで寒いと文句を言い、あまつさえ竜也に向かって「あっためて」などと抜かす。
「そういう台詞は女に言えば」
そう素っ気無く返すと、シゲはあっさり
「たつぼんのいけず」と軽口を返してきた。
その言葉だけを聞くのならシゲの言葉が冗談だったと思うけれど、その一瞬前の寂しそうな笑顔なんて見てしまったから始末が悪い。
すぐに着いてしまった学校の下駄箱で、同じ様に登校してきたクラスメイトに挨拶をしながら緩慢な動作で靴を履きかえるシゲを置いて、竜也は廊下に上がる。
(ったく、男が男をどうやって暖めろって言うんだ)
下駄箱のすぐ脇にある自動販売機の前に立って軽く嘆息しながらも、鞄を開けて財布を取り出す自分の行動を竜也は自嘲する。
(人前で抱き締めろとでも言うのかよ?馬鹿)
あのシゲなら言いかねないなと背筋が寒くなるのを感じながら、竜也はコインを一枚入れて紙パックのココアのボタンを押す。
「たつぼん、置いてくなんて酷いやんか」
かかとを吐き潰したシゲが廊下に上がってきて、竜也は取り出し口からココアを取り出してシゲに向かって放った。
「え、何」
いきなり放られたそれを焦りながらも無事受け取ったのを確認して、竜也はおつりを忘れずに確認する。
「指も身体もあったまって、まぁなんてお得なんでしょー」
棒読みで告げてさっさと歩きだす竜也の背後で、シゲは一瞬きょとんとして、それが先ほどの自分の言葉を竜也なりに叶えてくれたのだと気付き盛大に竜也への愛を叫んだ。
「たつぼん、愛してる!」
「うるせえ!」
それに応えて来たのは見事な回し蹴り。
幼馴染シゲ水シゲ(!?)7の竜也サイドバージョン。
実は結構シゲが大事、な竜也のつもりだったけど最後はやはり蹴りが入った模様(苦笑。
11月19日