浮気疑惑? 「あ、電話」 シゲは短く呟きながら、横目でちらりと助手席の竜也を見る。竜也はシゲの携帯を膝の上に乗せながら、流れる流行曲を聞いていた。 シゲはすぐに前方に視線を戻して、ゆっくりとハンドルを切って隣の車線に移動する。 「たつぼん、誰からか見てくれるか?」 「あぁ、うん」 竜也が慣れた手つきでシゲの携帯を操作し、着信相手の名前を告げると、シゲは短く、そいつやったらまぁええか、と呟いた。 その様子を後部座席で見ていた翼は、二人のやりとりに意外そうに目を瞬かせた。 「へー、佐藤って水野に携帯触らせるんだ」 「?どういう意味や?」 バックミラー越しにちらっと翼に視線を飛ばし、シゲは怪訝そうに眉をしかめた。 翼は同じ様にきょとんとして後ろを振り返ってくる竜也に、だってさと楽しそうに笑った。 「浮気してたら、携帯触らせたりしないだろ?だから、意外」 どこか弾む声で翼が告げた台詞に、シゲは思わず渋面を作った。 「人を浮気の常習犯みたいに言わんといてくれる?一回もしたことないっしゅうねん」 「へぇ、ホント?」 確認するように翼が竜也を見ると、竜也も首を縦に振る。 その様子に勝ち誇った様な笑みを浮かべたシゲに、翼は意に介した様子も無くさらりと付け足した。 「あー、お前なら浮気する時は専用に携帯もう一つ持つとか、そういう用意周到なことしそうだよなー。水野絶対気付かないんじゃない?」 その言葉に、車内の空気は凍りついた。 「シゲ・・?お前、まさか、もう一つ持ってるんじゃねぇだろうなー!!?」 「どわ、たつぼん!危ないって!!」 眦を険しく吊り上げた竜也がシゲの肩を揺さぶって、シゲは回りそうになるハンドルを押さえることに必死になる。 そんな二人の様子を見て、自分の身も危険な状態に陥りかねないにも関わらず、翼は満足げに腕を組んでシートにもたれた。 「佐藤、信用ないねーっ」 「姫さん、あんたなぁ!!」 横から言い募ってくる竜也をけん制しつつ、バックミラー越しに翼を睨み付けたシゲの目には、うっすら涙が浮かんでいたとかいなかったとか。 そして翼の隣では、雨の落ちてきそうな曇天を見上げ、一人ため息を吐く柾輝の姿があった。 えー、運転してる方の邪魔をすると、もれなく自分が死にますので止めてあげて下さい。 シゲ水+マサツバって好きなんですよー。主にシゲVS翼で。 元ネタは某Sさまの日記と自分の兄貴とその彼女の様子から。すいません、面白そうだったので、つい・・・。 (初出2004,8,29/再録2004,9,28) |