シゲ水天上界パラレルダイジェスト 前


天上人は、全てに平等でなければならない。
その白い翼は高潔と博愛の証である。

汝、囚われること無かれ。

「あ、やばい。先月分の報告書出しとらん」
「あー?やばいんじゃないのそれ。直で資料室持って行かないと」
「マジで?めんどいなぁ・・」
「そう言うなって。資料室の番人、お前が会いたがってた奴だぜ」
「あー、例の翼を汚しき呪われ人」

唯一人を愛することが、何故に罪なのか。

「初めまして、資料室番人の呪い人さん。俺はシゲや、よろしゅう」
「・・・報告書出して、さっさと失せろ」
「そないに邪険にせんでもええやん。なあ、誰かだけを愛するってどんな感じ」
「失せろ」

唯一人に向けられる恋情は、高潔な魂を汚し、貶め、翼は執着の鎖に縛られ落ちる。

「紅って呼ばれた伝説の掃除人、覚えてるか」
「当たり前や、奴にかかって昇らなかった魂なんざ無いって有名やんか」
「奴があの事故で死んだ時、呪い人は縋って泣いたんだとさ」

愛しい人間の為に流す涙が、何故世界を汚すことがあろうか。

「本当ならあいつだって下界に落とされて終わりだが、紅は死んだし奴自身優秀な掃除人だったからな。資料室の番人で済んでるんだよ」

「群青。あんたそう呼ばれてたんやって?なあ、何で口利いてくれへんの」
「お前が嫌いだからだ。暁のシゲ」
「俺のこと知ってるん」
「資料の上では有名だ」

満たされることを知った魂は、激しい飢えに鳴き声を上げている。

「俺の中をかき乱すな」

それはもう、DNAレベルの不可侵領域。

「何で俺に構うんだよ!」
「気になるんやもん、俺かて分からん」
「分かる様になる前に、もうここには来るな。お前だって忙しいだろうが」
「そない、泣きそうな顔して言われてもな。なあ、名前、何」
「・・・竜也」

いっそ、何も残さず消えてくれれば良かったのに。


いきなりわけの分からないパラレルですいません・・。
竜也とシゲが天使・・みたいな話。誰か一人を愛しちゃいけない社会。
後編に続いてます、一応。




(初出2004,12,15/再録2005,5,21)