シゲ水天上界パラレルダイジェスト 後


「シゲ、お前最近資料室に通ってんだって?まずいぜ、そういう行動はさ」
「なにが」
「まるで執着だ、減俸もんだろ」
「執着?これが?そないに悪いもんやないで」

執着は魂を濁らせ、独占欲は翼をもぎ取る。

「頼むから、もうその顔見せないでくれ」
「何それ。何でそないなこと言うん?俺何かしたか?俺は、俺はただ・・お前が、大事、やから・・・」

それは、何度と無く囁かれた言葉。

「大事・・・せや、大事、や。俺、お前が大事なんや。何やろ、これ。こないなこと今まで思いもせんかったのに」

それは今や、死刑執行へのカウントダウン。

「知ってる・・・」
「え?」
「お前のその言葉は何度も聞いた」
「は?いや、俺はこれ初めて・・」
「お前が、紅だった頃に」
「何、それ・・・」

「よくある話だろ?優秀な掃除人が死んだらその細胞を取り出してさ、それを培養して生まれつき優秀な奴を作るんだ。知らなかったのか?」
「知らん、そんなん・・。じゃあ、俺は」
「紅の細胞を持つなんて、羨ましいぜ暁」

ではこの想いは、己の魂に宿った決して朽ちない叫びだ。

「竜也、愛しとる」
「お前、何言ってんだ・・!!分かってんのか!?死ぬぞ!」
「分かっとる。けど、こんな、器が変わって記憶も無うなって別の奴になってもお前を想うなんて、凄いことやと思わん?誰が、消せる」

己の翼の輝きよりも、他の者を思いやられることに何故罪悪感を感じなければならない?

「・・・っシゲ・・!」

魂が穢れても、翼が折れても構わない。
愛している。

「掃除人暁のシゲ、資料室管理長竜也。汝らはこの天上界で犯してはならない罪を犯した」

この想いを罪と哂うなら。

「二度のこの失態、いくら汝らが優秀であってもこのまま見過ごすわけには行かぬ。天上界の汚点となろう」

唯一の愛無き故に平和な土地で、この魂が朽ち果てる位ならば。

「よって、汝らを下界に落とす」
「上等や!俺らは何度かて出会ったるで!そんで必ず、愛し合ったるわ!お前らが出来ないことを、俺らは何度でもやったる!」
「やれるものならな・・。連れて行け」
「シゲ、シゲ・・!愛してる!」
「こやつ、何て事を・・!!」
「首伸ばせ、竜也!」

ずっと、必ず、愛してる。
囁かれた言葉は空に漏れてしまわぬよう、合わせた唇で口移しで飲み込んだ。

「そこで指咥えて見てればいい!お前達が否定したこの魂が、どうなっていくか!必ず、幸せになってやる!お前らが否定したあの下界で!」

翼をもがれる音も恐怖では無かった。
耳に響いたのは互いに交わした一つの約束。
必ず、出会うよと。


はい、シゲ水天上界パラレルダイジェストでした。え?はい、これで終わりですよ?何か?
この後はほら、色んな形で色んなシゲ水が出会うんですよ!(笑。




(初出2004,12,15/再録2005,5,21)