準利で喜怒哀楽+α
怒
オレだって、和サンは好きだけどね?
「だけどさぁ」
土曜日の練習後、いきなり準サンからメンバーの追加を言い渡されたオレは、思わず不満そうな顔をしてしまった。
すると準サンは、オレ以上に不快そうな顔をしてオレを睨みつけてきた。
「あー?てめえ、まさか和サンを拒否するんじゃねぇだろうなぁ?」
そんなことしない。和サンはオレの尊敬する先輩で、準サンに負けない位オレだって和サンが好きだ。だから、別に和サンが嫌だなんて言わないけど。
「・・しないけどォ」
そのことは事実だったのでその通り述べると、準サンはそれでも眉間に皺が寄ったままのオレにさらっと言い放つ。
「じゃあいいじゃねぇか、映画くらい何人で行ったっていいだろ」
「そうだけどさぁ」
それでも未練たっぷりという口調のオレに、準サンはさっさとユニフォームを脱ぎ捨てて髪の毛を少し乱したままワイシャツを手に取る。
「だらしねぇ口調でダラダラ喋んなっつってんだろ」
オレには語尾を延ばしてしまう癖があるらしく、たまにそれを準サンに指摘される。でも今問題なのは、そんなことじゃない気がするんだけどさ。
「・・・デートだと思ったのに」
オレが素直にそう零すと、準サンは一瞬ボタンを留めていく手を止めた。
「あぁ?何、そうだったの」
本当にそんな単語は頭に一瞬たりとも浮かびませんでしたって顔で言うの、止めて欲しい。
自分だけがどれだけ空回ってンのか自覚させられる。
「準サンの、馬鹿!」
さすがに堪らなくなって叫んだオレに、準サンは顔色一つ変えない。
「オレが一言でも、デートしよう利央君、なんて言ったかよ」
それは、事実だけど。
「言ってないけどさぁ」
でも、言葉にすることだけが全部じゃないと思うんだけど。その裏に隠れてる暗黙の意味とかあるんじゃないの、恋人同士ってもんにはさぁ。ってそこまで考えて、オレと準サンは恋人同士って言っていいのかどうかちょっと悩んだ。
でも準サンは相変わらず淡々と着替えていて、黙り込んだオレの悩みをあっさり無視してくれる。
「んなこたぁどーでもいいから、てめぇ和サンの前でそういう態度取ったらはっ倒すからな」
ここまでオレの気持ちを汲もうとする意気込みが見えないと、いっそその男気にも惚れたくなる。
ねぇ、オレってあなたの何。
「とらねぇよ、オレだって和サン好きだもん」
なんて、はっきり言えないのは準サンがどれだけ和サンを好きか知っていて、どれだけ自分が準サンから見たら子供なのか、何となく理解しちゃってるから。
「じゃあいーだろ」
はいはい、準サンは和サンが大好きなんですよね、それだけですよね。
「いーけどー」
分かっちゃいるけど、それだけのことがやっぱり悔しくて、オレの口からは拗ねた響きしか出てこなかった。
怒っていうか、哀?一応怒ってるんですけど、準太相手じゃ消極的な怒り方しかできない利央が好き(可哀相。
8月31日