【銀新】ムラムラについて。 暗闇に慣れた目で、新八は隣で眠る銀時を見つめる。基本的に、布団は別々だ。事を致す時には当然同じ布団で眠ることが多いが、最近はそんな機会も無い。 忙しい、わけではない。悲しいかな、万事屋への仕事量は相変らずだ。喧嘩でもない。ただ何となくタイミングが合わないというか、そんな雰囲気にならないというか、それだけだ。 けれど、それだけの事に新八は焦れている。その家庭的な行動やら言動やらでイメージされにくいらしいが、新八もごく普通の十六歳であるから、それなりに性欲というものはある。ただ、目に見えてがっついていることが無いだけだ。 姉と二人暮らしであることもあって、卑猥な事柄からは遠く暮らしてきたことは確かだが、それでも銀時と身体を重ねる関係になってからは大分そういった事柄にも免疫ができたと思う。 ただ、そういう枕事への展開の持って行き方が、新八には分からない。 やはりそこは銀時の方が年も上で経験も豊富だから、いつだってきっかけは彼に任せてきた。それこそ銀時は、新八の若さよりを越えて下半身に元気が溢れているようで、これまで新八が物足りないとか思う余裕も無い位に、仕掛けてきていた。 それが、最近ご無沙汰なのだ。 もしかしたら、これまで積極的だったのは、銀時なりに新八に合わせてくれていたのだろうか。しかしそれも付き合いが安定してきたこの頃には、面倒になってきたとか? (えー・・それだったら、どうすればいいの、僕) 寝息も立てずに眠る銀時は、マジマジと見続ける新八の視線にも目を覚まさない。こんなに気配に鈍感で、本当に攘夷戦争に散会していたのだろうかと疑いたくなるが、今は目を覚まさないでいてくれた方がありがたい。 (飽きちゃったのかな・・・) 他人の素肌に触れるのは銀時が初めてだった新八と違って、銀時にはそれなりに経験があるはずだ。それこそ、女性との経験の方が多いだろう。ならば、豊満な胸も柔らかな身体も無い己には早々に飽きが来たのだろうか。 それはちょっと、大分困る。 (だって、僕はまだこんなに飽きてないのに) 夜着の隙間から覗く、糖尿寸前の癖に引き締まった胸板や腹筋の隆起に、ゾクゾクする。布団を跳ね飛ばす脚には目立たなくともしっかり脛毛まで生えているのに、あの脚に絡め取られる強引さに頬が火照る。 「んー・・・」 寝ぼけた声を上げながら首筋を掻く手には筋が浮いていて、その無骨な手が己の肌を這い回る感触を思い出すと、新八は堪らず枕に顔を埋めた。 (あーあーあーあー、こんなおっさんを視姦して喜ぶなんて、変態か僕は・・・) それでも、溜るものは溜るわけで、相手がいないのならまだしも目の前にいるのに一人で慰めるのは、とても空しい。 (潜り込んで、怒られないかな・・・) そっと身体を起こして、布団の上で正座をする。しばらく銀時の間抜けた寝顔を眺めてから、新八は意を決して銀時の掛け布団をまくった。 「銀さん」 顰めた声で呼びながら、そっと頬に触れる。自分とは違って丸みの無い顎のラインを指でなぞって、首筋から胸へと手の平を乗せる。 それだけの事で、どうしようもなく昂ってくる自分は本当に引き返せないところにいるんだと思いながら、新八はゆっくりと銀時に跨った。 「んぁ?」 さすがに重みを感じたのか、銀時が身じろぎをする。上体を倒してはだけた胸に口付けると、銀時はくすぐったそうに吐息を漏らして覚醒した。 「新八?お前、何してんの?」 状況を全く把握していない銀時は、暗闇に慣れない目でそれでも自分の上に乗っているのが新八らしいと分かった。分かったが、何故少年がこんな夜中に己に跨っているのかは、全く分からない。ましてや、新八が夜這いをかけるつもりであることなど、到底頭に浮かばない。 銀時にとっても、布団の中の事は自分が取り仕切ることという妙な義務感めいた思いがあって、まさかまだまだお子様の新八から手を伸ばされることがあるなどとは思ってもいない。 「え、と、あの」 少し言いよどんだ新八は、それでも銀時の上から退く気はないらしく、暫くして一つ深呼吸をしてから口を開いた。 「銀さんが、その気になる誘い文句を教えてください。何て誘ったら、僕とシたくなってくれますか?」 「ほぇ!?」 全く予想だにしなかった台詞を落とされて、銀時の声が裏返る。 しかし、その後ものの数秒のうちに、新八の臀部に銀時の硬いモノの感触が当たった。 |