初夢

「はー」
「何だ新八、新年早々溜め息なんか吐いて」
「新年早々餅を一人一枚ずつしか食べれない状態に、溜め息も吐きたくなるわ」
「そりゃおまえ、俺のせいじゃねぇだろーが。俺は頑張ったよ、今年の暮れは頑張ったよ。一人五枚は餅が食える計算だったろーがよ」
「その計算で、神楽ちゃんも五枚だった辺り、銀さんも疲れてたんだナァとお察しはしますよお疲れ様でした」
「あー・・・ね・・三倍計算必要だったよね・・」
「でもそんなことじゃないですよ、一枚だろうが餅は食べたしおせちも何とか形になったし、何よりこうやって平和な正月迎えられましたしね」
「まぁそーだな。後はこれでお年玉ががっぽり入れば言うことねぇな」
「アンタは渡す側でしょーが!心は少年でも、そんなとこまでは通用しませんよ!」
「んだよー、じゃあてめえはがっぽりなんだな?がっぽり姉ちゃんからせしめたんだろ?少し寄越せオラ」
「よしんば姉上が多少奮発してくれてたとしても、アンタが滞納してる僕の給料と差し引いたら銀さんの財布から出る分の方が多くなるんですけど」
「さーて、話を元に戻そうかー!何を溜め息吐いてたんだい、新八クン!」
「この人はまた今年もこんなだろうなぁ・・・。いえ、大したことじゃないんですけど。初夢がね、あんまりいい夢じゃなくって」
「あ?初夢って元旦に見るもんじゃねぇの?」
「いえ、確か二日の夜寝て見る夢ですよ」
「へーしらんかった。で?どんな夢だったのよ?遂に姉ちゃんとゴリラが結婚でもしてたか?」
「マジで洒落にならないんでやめてください・・。そんなんじゃないですよ。ただ、アンタが出てきてました」
「へー」
「はい」
「で?」
「は?」
「いや、だから、俺が出てきて何をしてたから、夢見悪いの?」
「いえ、だから、銀さんが初夢だったから夢見が悪かったって話ですよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい」
「はい」
「ちょおまてこらぁ!何だそれ!なんで俺が夢に出てきたら夢見悪いんだよ!寧ろ最高じゃネェか、愛しい銀さんの初夢で、もう今年は大フィーバーの予感じゃネェか!きっと駄菓子屋のおまけ当たりまくるよ!」
「アンタのご利益はその程度か。でも本当に実現しそうですね、試してこようかな」
「おーまーえーはー!この俺様のご利益が駄菓子程度に納まるってのかー!」
「自分で言ったんでしょーが!あぁもう、そうじゃなくて!」
「んだよ、どーせ新八は心の底では俺のことウザイとか鬱陶しいとか煩わしいとか足臭いとか思ってんだ・・・」
「現在進行形でその拗ね方はウザイですけど。でもそうじゃなくて、初夢も銀さんで、ていうか正直銀さんが出てきたことしか覚えてなくて、あぁ今年も銀さんばっかりになるんだなぁと思ったら、何となく気恥ずかしかったというか・・・」
「え・・・」
「というわけで、今年もよろしくお願いします!初詣に行って来ます!」
「ちょ、おいおいおいおい待てコラァァアアァァアア!てめぇ正月早々口説き逃げしてんじゃねええぇぇぇええ!」
「誰が口説いたかあぁああ!」
「口説いてんじゃねぇか!もうこれ完璧口説き文句だよ!なぜなら銀さん口説かれたから!ちょ、待て、戻って来い新八!初詣なんざ松の内に行きゃあいいから!とりあえず今日は寝正月!寝正月すんぞコルアアァァアア!戻れええぇええ!」
「いーやーだー!!!僕はアクティブな正月を過ごすんですーー!」
「アクティブできるよ!布団の中で思いっきりアクティブに過ごせば良いじゃない!」
「アンタは往来で何を叫んでんだぁぁぁぁぁあああ!!!」
「俺は世界のどこででも愛を叫べる男だ坂田銀時!」
「恥かしいからどっかいけえええぇええ!追ってくんな!」
「一人で恥をかいて堪るかっ、待たんかい目がねをかけた寧ろ眼鏡志村新八ィィイイイ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・今年も煩くなりそうだねぇ」
「そうアルな」
「迷惑な奴らデスネー」
「わん」