「こらー!またお前か坂田ーー!!!」
「そー怒るなってカミセンー。大丈夫大丈夫、俺とっくに普通免許まで持ってっし」
「そういう問題じゃないんだよ!そもそもバイク登校が禁止だー!」
「え、マジで?いつから?俺はいつから時代の波に乗り遅れてンの」
「開校以来ずっとだ、馬鹿者ーー!ていうか、時代の波に乗りたいなら、さっさと卒業せんかお前はー!」
「教師が、ていうか、とか言うのってどうなの」
「坂田ぁ!」

「うわ、またやってる」
「何?」
「あれだよ、坂田さん」
「誰?」
「え、新八君知らないの?有名だよ、万年三年生の坂田銀時。とっくに成人越えてるとか越えてないとかいう、先輩」
「へー・・・高校ってそんなに留年できるの?」
「そこかよ。色々噂はあるけどさ。怪我して休学してたとか、途中で留学してたとか、高校卒業したら政略結婚させられるのが嫌で留年しまくってるとか、実は海外で既に大学まで出てるとか、ネンショー入ってた事があって出席日数足りてないとか、色々」
「ふぅん、知らなかった。でも、言われてみれば確かに、少し大人っぽいね」
「あの銀髪だし、いくら俺ら一年でも三ヶ月も経てば誰でも知ってると思ってた。新八君って、あんま周りに興味ないの?」
「うーん、ボーっとしてるとはよく言われるけど」
「ボーっとついでに、うっかり関わったりしないようにね?坂田さん」
「関わる機会も無いと思うけど、なんで?」
「なんか知り合いに危なそうな人、多いって話。ヤクザっぽい奴と歩いてたり、水商売系の姉ちゃんとそういう店から出てきたり、色々」
「色々が多い人なんだ」
「目立つんだよ、良くも悪くも。生活指導の先生と、二人で煙草吸ってたって話もあるけど」
「はは、何ソレ」
「ともかく、新八君みたいにお人好しが全面に滲み出てる人は、うっかり利用されたりしそうだから気をつけろって事」
「何か馬鹿にされた気もするけど、覚えておくよ」

「悪いけど、そこ通して」
「あ、れ。坂田、先輩」
「あ?誰、お前」
「え、と、あの志村新八、です。一年A組です」
「ぶはっ」
「え?」
「いやワリーワリー、クラスまで言う律義な奴、初めて見たから」
「・・・だって、どこの誰かも分からない人間に、いきなり名前呼ばれたら怖いじゃないですか」
「俺は慣れてるけどなー、なぁんか悪目立ちっつーか噂の先走りっつーか、してるみたいだから?」
「屋上、立ち入り禁止じゃないんですか?それに、煙草・・」
「あぁ、やっぱ匂う?校内禁煙だから、出て吸ってたの」
「校内って、敷地内って事だと思いますけど」
「お前、面白いね。何、こんなトコで弁当?友達いねーの」
「いますけど、良いじゃないですか別に」
「いいけどさ、うまそーね」
「ちょ、勝手に取らないでくださいよ」
「まぁまぁ、減るもんじゃねーし」
「減るよ!確実に!アンタ何言ってんだ!」
「っはは」
「・・・・坂田先輩って、万年三年生なんですか?」
「んーんー・・まぁ、高校生活三年以上は送ってるな」
「どうしてですか?」
「何で?」
「他に会話のネタも無いんで、先輩が去る気がないなら場繋ぎとして聞いておこうかと」
「・・・。お前、マジ面白いね。ね、オトモダチになんない?」
「はぁ?」
「や、俺、こんなんだから校内にトモダチって殆どいなくてさ。つまんないの」
「お弁当食べる友達もいないのって、先輩の方ですか」
「言うねぇ。まぁ事実だけどね。で、どう?」
「・・・・・、いいですけど。危ない方々との付き合いまでは、しないですよ」
「あぁ、あの噂?無い無い、俺校則は破るけど法律は守りたい派だから」
「派とかじゃなくて、それは両方守るもんです」
「じゃあ、とりあえず明日は俺の弁当もよろしくね」
「はぁ?!」
「旨かったもん、出汁捲き卵。俺としては、甘い玉子焼き希望だけど。それじゃあ明日もここで、よろしくね」
「ちょ、坂田先輩!」
「運命の相手を待ってんだよ」
「はい?」
「万年三年生の理由、そんじゃなー」
「おいっ!ちょっと!・・・・・・・・・・・・なんか、凄く馬鹿にされた気がするぞ・・・」