噛み砕く。

ガリッと音がして、新八は眉をしかめた。
「アンタ、また噛み砕いちゃったんですか」
隣を歩く銀時の口から、ガリッゴリッと硬い物が砕ける音がする。
「糖分糖分言うなら、大事に舐めてくださいよ」
「んー」
銀時は生返事をしながら、口の中で砕け散った飴を舌で綺麗に喉へ流し込んだ。
「癖なんだよなぁ、飴だきゃあどうも駄目だ」
アイスだとかパフェだとかはじっくり味わって食べる銀時だが、何故だか飴玉だけは舐め始めてからそうたたないうちに、派手な音を立てて噛み砕いてしまう。だから、いつも飴は一分ともたない。
「もー、好きなら味わってくださいよ」
今日はもうあげませんからねと唇を尖らせる新八の項を見下ろしながら、銀時はその首にも食いつきたいなぁなどと考える。
「優しくするだけが愛じゃないのよ、新ちゃん」
「はぁ?飴の食べ方討論ですか?」
いーや、愛しいモノの愛で方討論。銀時が相変らず死んだ魚の目で答えると、新八はいっそう眉間の皺を深くして、
「大人の爛れた恋愛は、僕には分かりません」
と答えた。
分からないなら教えてやるかあと欠伸交じりに零した銀時に、新八は華奢な首を傾げて、銀時を見上げた。

大事で大事で大好きだからこそ、細かく噛み砕いてその脆さと甘さを存分に味わいたい。