銀さんが、ジャンプを読みながら独り言で、「あー、甘酢っぱい恋愛でもしてーなー」と死んだ目で言ったので、「そんな死んだ目ぇして仕事も無い上に甲斐性も無い男と、誰が恋愛するんですか?」と言ってみたら、結構ダメージがあったみたいで、涙目で「てめぇ眼鏡割るぞ侮辱罪!」て返された。
「俺ァ今までろくな女と出会ってねぇからな、お前の姉ちゃんとかどごぞのマゾ忍者とか、あーマジでろくでもねぇよ」
アンタの方が侮辱罪だよ、人の姉上何だと思ってんだコノヤロー、結構おてんばなのは認めるけども。
「そんなの最近の話じゃないですか、今まで一個も恋愛してないわけじゃないでしょう、一応」
「一応ってなんだお前、銀さんこれでもモテんだよ。でもなぁ、昔は色々ばたばたしてたからよお、そんなあまぁい柔らけえ思い出なんて、無いのよ」
「爛れてそうですもんね、アンタの恋愛」
前にチラリと思ったことが思わず零れてしまったら、また侮辱罪!と洟をかんだティッシュを投げられた。
汚いなぁとそれを拾い上げて、銀さんのデスク横にある屑篭へ持って行きながら、何故だか唐突に思いついた言葉を僕は口にしていた。
「じゃあねえ、銀さん」
「んあ?」
鼻をほじりながらジャンプのページをめくっている銀さんは、お世辞にもカッコイイなんて言えなくて、ただの怠けた親父そのものだったけど。
「僕と、愛ある恋愛でもしてみますか?」
「っだあ!?」
鼻の穴に突っ込んでいた指を、驚きの余り奥へ指し込んでしまったらしく、銀さんはかなり間抜けでかっこ悪くて、ついでに鼻血も出ちゃって汚い事になっていた。