6 落ち着かない / 58 「ある朝の風景」 F 「お早うございます」 「あー・・はよ」 漂ってくる朝食の匂いに誘われるようにふらふらと寝室から出ててきた悟浄に、八戒は微笑みながら肩越しに振り返り朝の挨拶をする。悟浄はまだ半分寝ているような顔で、間延びした挨拶を返した。 そしてまた鍋に向き直る八戒の背中を見ながら、悟浄は乱れた髪を掻き回す。 ダイニングテーブルの上には、半熟の目玉焼きとトースト。昨晩悟浄が呑んでそのままにした缶ビールの空き缶も、山の様にして放ったらかした筈の灰皿も見当たらない。 視線をテレビのある方へ移すと、ソファの前のローテーブルの上に綺麗になった灰皿が置かれている。 (何だかなぁ・・・) 食卓に腰を下ろし、明るい日の光を透過するガラスコップの磨かれた美しさに何だかため息が出そうになる。 こうして八戒に食事なり掃除なり、何かしら世話を焼かれるのが嫌なわけではない。ずぼらで適当な自分のフォローをするようにして八戒が楽しそうに家事をしてくれるお陰で、この家も大分過ごしやすくなったことは事実なのだ。 けれど、やはり今までの自分の生活を振り返ってみると、こんな朝の風景に自分が存在することがおかしな気がしてくる。 「どうしました?」 目の前に湯気の立つスープを置きながら、八戒が怪訝そうに尋ねてくる。 悟浄はあらぬ方向に視線をずらし、誤魔化すようにえーうーとうめき声を上げた。 「昨日、空き缶を寝室に持って行って、灰皿にしてシマイマシタ」 答えてからちら、と悟浄が八戒の方を窺うと、八戒は朝に相応しい爽やかな笑みを浮かべながら自分も食卓につく。 「きちんとヤニを落としてから、空き缶のゴミ箱に入れてくださいね」 「・・はーい・・・」 いつの間にか自分の家はゴミの分別までする優良市民の仲間入りをしていたのか・・とこれまた視線を遠くに投げたくなるようなものを感じ、悟浄は大人しく朝食に対して手を合わせた。 「いただきます」 今まで一度だって、自分のためだけに用意された朝食にありついた事は無かったし、それに対してこうして手を合わせて「いただきます」なんてしたこと無かったのになぁ、と半ば投げやり気味に考えていると、八戒が嬉しそうに、 「はい、どうぞ」 と応えたので、悟浄はとてもそわそわしながら朝食を口に運んだ。 本当なら八戒が「可愛い人」なんでしょうけれど、58の力関係は8>5だと信じてますので、これは悟浄が可愛いんです。 家庭的な愛情に慣れてない悟浄さんは、「お帰りなさい」とか「召し上がれ」とかに弱い気がします。お母さんのような八戒にメロメロです(え。 お持ち帰り可です。誰か可愛い悟浄(でも攻め)好きな方いませんかねぇ。 |