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        アンフェアー









 彼は眠っていた。長い睫毛を伏せ、日に焼けた頬を無防備に晒しながら。
 緩やかな風が指先を掠め、それに促される様に額を覆う前髪に手が伸びた。
 起こさないようにそっと前髪を掻き上げると、丸くてつるりとした額が露になる。滑らかな肌をそっと撫でて、ほぼ中央に一つだけニキビができていることに気付いた。
 剥きたてのゆで卵の様な額に一つだけぽつりと鎮座している赤いニキビが、唐突に無性に愛しくなった。
 唇を落とした後で、菌が入ったりして大きくなったら怒るかな、なんて考えた。


(フェアじゃない)
 利央は麻連に向かう途中、真剣な表情で自転車を漕いでいた。
 空は良い天気で、時々ぽかりと雲が浮かんでいる意外は見事に色紙を貼り付けたかの様な青い色。昨日一日で車の排気ガスや向上の煙なんかで汚された空気が、一晩経って透明に浄化されたかのように清清しい。
 そんな中で、大きな部活鞄を自転車のカゴからはみ出させた利央は、もう一度胸中で繰り返す。
(フェアじゃないよな)
 今の彼にとっては、顔を出し始めた太陽が照らす緑の瑞々しさも、朝の挨拶を交わす鳥の可愛らしく甲高いさえずりも、意識に入っては来ない。
 ただ頭を占めるのは、明け方目覚める直前に見た夢の映像。
 それは彼にとってはとても都合の良い幸せな夢だったけれど、そんな非現実的な展開に勝手に巻き込んでしまった人物に、目覚めた時から妙な罪悪感を感じていた。
「はよーす」
 同じ朝練仲間のクラスメイトや偶々出くわした野球部員達に間延びした口調で挨拶をしながら、利央は駐輪場に自転車を停める。
 前輪に鍵をかけ、後輪にチェーンタイプの鍵を巻きつけ、部活鞄を持ち上げて利央は一人気合を入れた。
「よし」
 今日もまた、野球中心の一日が始まるぞと気持ちを高揚させながら、同時に別のことも決意しながら部室に向かうといつもの面子が既に集まっている。
 手早く着替えて練習準備の為にグラウンドへ出ると、既に練習を始めている二人がいた。
「和サン、準サン!」
 桐青学園野球部の主将で利央の目標でもある捕手の和己と、二年のエースピッチャー準太。
「おー、利央。おはよう」
 和己はいつもの様に爽やかな笑顔を浮かべ、利央の頭をぐしゃぐしゃと掻き回す。子ども扱いされることが嫌いな利央だが、彼にこうされるのは嫌いじゃない。彼に可愛がられて喜ばない下級生は多分いない。
「さっさと準備しろよ、利央」
 朝の挨拶も無しにいきなりそう言ってくるのは準太だ。和己の手が利央の頭にあることが気に入らないらしく、試合の時の様に無表情である。
「朝の挨拶も無しにそれぇ?準サン。挨拶は人間関係の基本だよー」
 和己と投球練習をしていた為できている距離を真っ直ぐに縮めてきて、準太は利央の頭を思い切り張り倒した。
 でぇっ、と呻き声を上げて屈み込む利央に、完全に見下した目線で淡々と告げる。
「犬コロに人間関係を語る資格はネェ、さっさと準備に入れ。オレと和サンの貴重な練習時間の邪魔だ、アホ」
 背中越しに既に準備に走り回る同学年たちを指差され、利央は唇を尖らせて甘えた声を出す。
「準サン、冷たいー。おはようぐらい、言ってくれてもいいじゃん」
 すると準太はそんな利央を鼻で笑って、スパイクで背中を押してくる。
「ほおう、高一にもなってんな気色悪いことを言うのは、こいつか?あぁ?」
「痛い痛い、痛い!分ったってば、分ったから止めてよ準サン!」
 利央が目に涙を溜めるまで一通り背中を踏みつけた準太は、満足気に口角を上げた。
「うう・・・サド・・・・」
 苦笑しながら利央の背中を払ってくれる和己の肩にしがみ付きながら呟けば、何か言ったかと睨み付けられ慌てて首を振る。
「準太は愛情表現が極端だからなぁ」
 中等部からのやり取りにすっかり慣れてしまっている和己は、呑気にそう言いながらほどほどにしろよと準太にも笑いかける。
 和巳に笑いかけられれば弱い準太は、一応素直に頷いているがそれは条件反射の様なもの。和己の言葉であっても準太が利央への態度を改善させたことなど無い。
(もー慣れちゃったけどさぁ・・・)
 そしてこれ以上蹴られないようにと急いで準備に加わる為駆け出しながら、利央は背中にかかった準太の重みを思い出す。
(オレ、変態さんかもしんない)
 準太の手酷い態度に慣れたばかりではなく、じわりと背中から甘い喜びが滲んでくる辺りもう末期だと思った。
 利央はもうずっと、準太に片想いをしている。
 だけどそれは、伝えてはいけないことだった。彼は男であるし、先輩である。同じ部活仲間でもあるし、甲子園という同じ夢を追ってもいる。だから、自分のこんな想いを伝えては迷惑だと分かっているし、今後の関係にひびが入ることも想像できる。
 捕手としてもそれ以外の生活でも何も考えて無さ過ぎると準太に酷評される利央だが、一応常識だとか世間体だとかいうことを考えることもある。
 だから、この想いを伝えるつもりは無かったし、それでも幸せだと思っていた。毎日のように会えるだけで、練習試合で偶にバッテリーを組ませてもらえるだけで。そして来年には恐らく、正式にバッテリーを組めると考えるだけで。
 利央自身、自分の想いがどの程度のものなのか、自覚していなかったのだ。だから、今朝の夢は中々に衝撃的で、もう一緒にいられるだけで幸せだなんて言えないくらいに、彼が欲しいのかと考えて愕然としてしまった。
 だから、登校途中で決意したのだった。
 玉砕覚悟で、伝えてしまおうと。そして玉砕した後で、もう一度後輩としての位置をわきまえるようにしようと。

 
 利央は何をする時にも、先に神様に祈ることは忘れない。試合の前やテストの前にも、神様に祈る。ベストを尽せますように、誰も怪我する事無く最高のプレーができますように、張ったヤマが当たりますように、見守ってください、アーメン、と。
  その日の昼休みにも利央は祈りる為に礼拝堂に来ていて、今日の練習の後上手く準太に想いを告げることができますようにと、それを祈った。
 上手くいきますようにとは祈れなかった、神様にだってどうしようもないことがあることは、祖母が亡くなった時に利央は知ったから。
 そしてその後、食後の眠気に勝てずに利央は居眠りをした。そして目を覚ましたら、そこに準太がいたので一瞬夢の中で夢を見ているのかと思った。
「あれぇ?準サン~?」
「何気の抜けた声出してんだ、間抜け面」
 利央が身体を投げ出して寝ていた長椅子を見下ろすように立つ準太の表情は、ステンドグラスから漏れる逆光でよく見えない。
「これ、夢ぇ?」
 眠たげに目を瞬かせて利央が首を傾げると、準太が眉を顰めたのが分った。
「寝ぼけてんじゃねぇよ、つうか勝手に人の夢を見ようとすんな」
 余りに明瞭なその答えに、利央はどうやらこれは現実らしいと大きな欠伸を一つして身体を起こした。硬い長いすの上で寝ていたせいか首が痛く、軽く回すと筋がパキパキと鳴った。
「準サン、ここに来るの珍しいよねぇ?何か忘れ物お?」
「あぁ、筆箱忘れた」
 そして片手で細いシンプルな筆箱を掲げて見せる準太に、ふうんと呟きながら利央はぼんやりと彼を見上げる。
「何だよ」
 昼の穏やかな空気の中で、ステンドグラスを通して色の付いた光が準太の背後に鮮やかな帯を作り出している。綺麗だなぁと利央は素直に思い、そして思わずつるりと口に出してしまった。
「うん、準サン好きだなぁと思って」
(あ、放課後に言うつもりだったのに)
 そう考えても後の祭り、零れたミルクは元には戻らない、覆水本に返らず、耳に届いてしまった言葉は空耳にはできない。
「あぁ?」
 案の定準太は理解できない、といった表情を浮かべた。利央は平生も準太や和巳に対して好きだ好きだと、犬が懐く様に簡単に口にするので、今更改めて何言ってんだというのが準太の正直な感想だった。
 しかし利央の見上げてくる目は真剣で、それでいて縋るような色をしていた。色素の薄い茶色い瞳に、困惑した準太の顔が映りこんでいる。
「キスしたいなぁって思うくらいに、好きだよ」
 準太の頬に、朱が走った。しかしそれは羞恥からというよりは怒りの為であると、引き結ばれ見開かれた瞳が語っていた。
「ふざけんな」
 想像していた以上に硬く冷たい声が降って来て、利央は胸がしめつけられる。拒絶されることは分っていたが、それでも好いている相手のこういう表情は、見ていて痛かった。
「てめぇ、何からかってんだ」
 抑揚の無くなった声が浴びせられて、利央は肩をひくりと震わせた。
「からってなんかないよ。無理だって分ってるけど、オレは準サンが好きなんだ。夢に見るくらい、準サンが好きだよ」
 それでも、伝えるだけは伝えなければと利央は必死に言葉を探す。けれど準太の表情に変化は無く、彼は数秒間利央を見下ろした後で踵を返した。
「調子こいてんじゃねぇよ」
 背中越しに発せられたその言葉は、深く利央の胸を抉った。
 そのまま礼拝堂を出て行く準太の背中に、利央は何も言えずに唇を噛み締めた。
 予想していた通り、覚悟していた通りの反応だったじゃないかと言い聞かせながら、それでも震える唇と零れそうになる嗚咽は抑えられなかった。目尻に浮かんでくる涙を乱暴に拭いながら、利央は拳を握り締めた。
 言わなければ良かったと、後悔が頭をもたげる。けれど、言わないままでいたならば彼が言ったとおりもっと調子に乗っていたかもしれない。もしかしたら自分だけが特別なんじゃないかなんて、思い上がっていたかもしれない。
 それなら、やはり今白状してしまって良かったのだと利央は自分に言い聞かせた。
 報われないことなど、分かっている。今言おうが耐えていようが、受け入れられることなど無いのだから、これ以上深みに嵌る前に終って良かったじゃないかと、自分に言い聞かせた。
 けれど最後、部活仲間として後輩としての分をわきまえるから今までどおりでいてくれと伝えられなかったことが、心残りだった。


 案の定、それ以降の二人の関係は悪化の一途を辿った。
 利央は精一杯の努力をして、挨拶も練習も普段どおりに振舞おうとしたが、準太の方がそれを拒絶した。
 目を合わせない、合ってもすぐに逸らされ、挨拶もおう、だのあぁ、だの簡潔なものになってしまった。練習中はさすがに会話をすることもあるが、それも最低限まるで事務連絡の様なアドバイスだったりする。
 利央の方ではそれをどうすることもできず、ただ準太の怒りか混乱かともかく落ち着いてくれるまでは耐えるしかないのだと他人が見ているところではいつもどおりに振舞った。
 しかし利央がどれだけ平生を装ったところで、準太の態度があからさまである以上周りがそれに気付かないはずが無い。
 それまでの準太は、過剰じゃないかと思えるくらいに利央をからかったり暴力にしか見えないようなスキンシップを取ったりしてきたのだ。それが掌を返したように冷めた態度を取るようでは、何かありましたと教えているようなものだ。
 和己が真剣に心配し、慎吾がからかい混じりに気にかけてくれても、どうしても二人の間のぎくしゃくとしている空気はなくならず、果ては部活の後監督にまで呼び出され言われてしまった。
「てめぇらの間に何があったかなんて馬鹿馬鹿しいことは聞かねぇけどな、来週の練習試合はてめぇら組ませていくからな。無様なことしやがったら、はっ倒すぞ」
 普段は部員同士のいざこざには口を出してこない監督にまで心配されているかと思うと、利央はただ俯いて頷くしかなかった。
「はい」
 準太は、顔を上げながらも硬い表情のままだった。
「っス」
 呼び出しから解放された後は、一瞥もくれずに先に歩き出す準太の背中を見ながら、自分の気持ちは周りにこんなに迷惑をかけるだけでしかなかったのかと、利央は悲しくなった。
 野球がしたい、準太と和己と慎吾と他の仲間たちと、最高の夏を迎えたい。和己も慎吾も、今年で最後だ。今年のメンバーで野球ができるのは、もう最後なのだ。
 それなのに、こんな自分の馬鹿げた気持ち一つでそれが最低なものになるなんてことだけは、避けたい。
 自分の気持ちは真剣なものだけれど、それを外に出してはいけなかったのだ。
 今更自分の考え無しの行動を悔いても遅いけれど、それでも、やり直すことはできるはずだ。準太だって、中途半端な夏で終りたくなんて無い筈だ。
(オレの気持ちはもうこの際仕方無いから、だから、準サン)
 とっくに部員達がいなくなってしまった部室へ戻り、準太が無言で着替え始める。利央は戸口に立ったまま、意を決して拳を握った。
「準サン、野球しようよ」
 ユニフォームのボタンにかけていた手を止めて、準太が利央を見る。ジジ・・と蛍光灯が鳴いて、白い明かりが揺れた。
「オレが馬鹿なこと言ったのは、もう忘れてよ。もうオレ、ちゃんと後輩に戻るから、ちゃんとするから、だから、準サン。ちゃんと野球しよう」
 準太の黒い瞳を真っ直ぐに見つめるだけで、胸が痛む。けれどそれは準太には何の責任も無いことで、利央自身がどうにかしなければならないことだから。準太の長い指が黒いその髪を掻き上げるだけで、胸が苦しくなる。だけどそれもやっぱり準太には何の関係も無い話で、利央だけの問題だ。
 全てが準太に起因しているのに、どれも彼と利央を繋いではくれない。
「やっぱり、ふざけてたわけか」
 溜息と共に吐き出された声は、いつもより低音で乾いていた。
「違う!」
 咄嗟に反論してしまってから、利央は後悔した。冗談だということにしてしまった方が、元通りの関係に戻りやすかったかもしれないのに。ここでまた自分は本気だなどと繰り返せば、準太は更に引いてしまうのではないかと不安になる。
「何が違うんだよ」
 不機嫌そうに吐き捨てる準太に、利央は視線を床に落とす。ここでやっぱり冗談でしたと言い直すことは、できそうになかった。
「オレ、本当に準サンが好きで。だけど報われないことなんて分ってたし、普通に後輩として一緒に野球できれば良いって、本当にそう思ってた。あの日言っちゃったのは、夢見ちゃったからで。このまま行ったらオレ、準サンに気に入られてんじゃないかとか、勘違いしそうになるんじゃないかなって夢で、だから、一度玉砕してリセットして、後輩にちゃんと戻ろうって思って」
 でも、これからも後輩としてよろしくお願いしますという台詞を言う前に、準太が切れて去ってしまったので言えなかった、と利央は床に薄く浮いた埃を見ながら乾いた唇を舐めた。
「勘違いの夢?何だよそれ」
 準太の声が、不意に近くなった。利央の落とした目の端に、準太の影が映って彼が利央に歩み寄ったのが分る。
「あの・・・えと・・・・・」
 利央は言いよどんだが、もう全て白状して本当にすっきりさせてしまった方が良いだろうと腹を括り、正直に口を開いた。
「準サンと、付き合ってる夢見たんだ・・・・」
 それは凄く嬉しくて凄く楽しい夢だったけれど、けれど告白もしていないのに勝手にそんな夢を見ることは何故だか酷く卑怯な気がして、利央は何だかフェアじゃないと思ったのだ。
「・・・馬鹿か」
 耳まで真っ赤にして俯く利央に、準太は大きな溜息を吐いた。その顔からはいつの間にか険が消えているが、俯いたままの利央にはそれは見えない。
「で?オレに承諾も無しに付き合ってる夢見てすいませんでした、そんな夢見ちゃうくらいオレが好きなんです。だけど報われないことは分ってるので、夢見るくらい許して下さいとでも、言うつもりだったのかよ?」
 改めて当の本人に言われると恥かしさも情けなさも倍増で、利央は無意識の内に後ずさりをして背中が扉にぶつかった。古い部室の扉はぎしりと音を立てて利央の体重を支え、利央はこのままドアノブを回して逃げ出したいほどの羞恥を感じる。
「・・ったく、紛らわしいタイミングで言いやがって・・・・」
 利央には理解できない台詞を独り言の様に呟いた準太は、俯いたままの利央の視界に更に靴先まで見えるくらい近付いた。
「お前、ホントにオレのこと好きなの」
 ドン、と利央の顔の真横に準太の腕が伸びて扉を支える。
「なあ利央、お付き合いする夢見て浮かれちゃうくらい、オレのこと好きなんだ?」
 そして準太の吐息が耳元をくすぐって、利央の頭は混乱する。
(何、この展開?)
 自分はもう一度告白し、振られる為に思い切って彼に話しかけたのだ。本気であること、けれど彼を煩わせる来は無いことを告げて、もう一度部活仲間として共に野球をする為に、再度恥を晒すことを覚悟したのに。
 どうして今、準太はまるでこめかみにキスするかどうかの距離で、囁いてくるのだろう。
「お前のそういうとこ、可愛いと思うよ」
 その余りの言葉に、利央は弾かれた様に顔を上げた。その目尻は真っ赤に染まり、眉根は限界までぎゅっと寄せられている。
「オレ、オレ、は、本気で準サンが好きなんだよ・・?そりゃ、男同士で気持ち悪いとか思うのかもしれないけど、でも、だからって、そんなからうこと無い・・ろぉ・・!」
 最後の方は涙声が混じってしまって情けなくて、利央はその表情を隠すように片手で顔を覆った。
 こんな仕打ちは酷い、そう思い唇を噛み締める利央に、準太の声はどこか弾むように甘い。
「からかってねぇよ、あのタイミングじゃなけりゃもっと早くハッピーエンドだったってだけの話だ。あれにはびびったよ、ばれたのかと思った」
「なにが・・・?」
 話が全く見えなくてただ重なるくらいの距離で鼻先を掠める、準太の匂いに利央の体温が上がる。
 準太はそんな利央にはお構い無しに、耳朶を食みながらそっとクスクスと笑った。
「こっちの話。そんなことより、そういやオレまだ返事してなかったっけな」
 何に?と利央が問い返すよりも先に、準太は真正面から利央を覗き込んだ。利央の好きな整った顔が意地悪そうな笑みを浮かべて、大抵酷い台詞しか吐かない薄い唇がその言葉を紡いだ。
「お前の夢、正夢にしてやってもいーよ」
 そして準太は空いている方の手で、利央の頬を撫でた。かさついた指先が頬を滑り唇をなぞり、利央は金縛りにあったように身動きが取れず、静かに落ちてくる準太の唇を半ば呆然として受け入れた。
「準サン・・・?」
 これはどういうことだと問えば、準太からはただ笑って意味の通らない言葉が返してきた。
「でこのニキビ、でかくなったりしてねぇ?」


 一番アンフェアーなのは、一体誰か。
 








 えーと、あれ?準サンが悪い男っぽいなぁ・・・予定外だぞ!?
 久しぶりに書くと、準サンはかっこ良くなれるようですね。続けて書いてるときっと、利央が大好きな素直になれないバイオレンス攻になるんだ・・・(あんまり変わらない。
 この後も、きっと二人は上手く行くまでまた大分かかるんですよ。だって準太は告白してないし、利央は展開に着いていけてないし!
 あぁもう、手間のかかる子達!