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いきなりきたメールに、利央が驚かないはずも無かった。元々準太はマメに連絡をする方ではなく、一応身体の関係まであるという利央に対してもよほどの用事が無い限りはメール一通寄越してこない。 (ていうか、わざわざメールなんかしなくても、毎日会ってたしなぁ・・) 利央が何度読み返しても、そのメールは幻ではないらしい。その証拠に、画面が暗くなるほど見つめていても、その文面は消えたりしなかった。 連絡をマメに取り合う癖をつけてこなかったせいか、準太が部活を引退して本格的な受験生体勢に突入してしまってから、二人の間は殆ど没交渉状態になっていた。 当たり前だけれど利央はそれが寂しくて、度々下らないメールなどは送っていたけれど、それに返信がくるのも数度に一回。しかも不機嫌丸出しの、煩わしいと言わんばかりの返事が常で、その内準太を怒らせるのが怖くて利央からもなかなか連絡をしなくなった。 (だって、準サンが本気で和サンの大学行きたがってるの、知ってるからさ) 大学でも野球を続けたいが為に和己が選んだ大学は、今の準太の成績では、ワンランク厳しいらしいと慎吾に聞いた。だからこそ彼は懸命に勉強しているのだろうし、利央にそれを邪魔する気は無い。ただ少し、寂しいだけで。 そう思っていたら、先日慎吾が遊びに来た。彼は卒業後、野球部が強いわけでも何でもない大学に進学した。意外にも、彼は将来の職業に関して夢というものを持っていて、それを実現する為の進学だった。ヘラリヘラリと何を考えているのか分からないことが多かった先輩が、意外にもしっかり将来を考えていることに、進学先を聞いた当初、利央も準太も驚かされた。 それはともかくとして、希望通りの進学を果たして夢へ一歩近付いた慎吾は準太が引退してから、利央にマメに連絡をくれるようになっていた。昔から、周囲のことに無関心であるような素振りで実は面倒見の良かった慎吾のことだから、二人がコミュニケーション不足に陥ることを見透かしていたらしい。 『お前ね、いくら向こうが受験生だからって、遠慮ばっかしてたら意味ねぇよ?それで終っちまったら、どうすんのよ』 そう言って準太に連絡を取るように助言してくれた慎吾だったが、利央は乗り気では無かった。 彼はきっと頑張って勉強している、大好きな野球も我慢している。対して自分はまだ、野球中心の生活で思い切り部活をしている。そんな自分が何を言っても励ましにはならないだろうし、我侭なんてもっと言えない。 『しょーがねぇなぁ。お前は変なトコで、気ィ回す奴だからな』 普段はただの我侭小僧のくせにな、と言って笑いながら頭を撫でてきた慎吾に、我侭じゃないと言い返しながら利央は思わず涙ぐんだりした。昔はよく、準太がそう言ってどつきながらも頭を掻き混ぜてくれたなと思い出してしまったからだ。昔、なんていうほど遠くは無いはずなのに、利央にとってはそれがもう遥か過去のことの様に感じられた。 『ま、ここは先輩が一肌脱いでやりますかねぇ。それで動かなかったら、マジで脱いでやっても良いけど』 何やら不穏な気配を感じる後半部分は思い出さないようにして、利央は再び明るくした画面で準太からのメールを読む。 慎吾が遊びに来てから一週間程度、このタイミングで準太からメールがきたということは、彼が言葉どおり何かしたか言ったかしたのだろう。 (それにしても、何したんだろ、慎吾サン・・・) メールの文面は短く、顔文字も皆無。あの準太が顔文字を使用するのも薄ら寒いが、もしかしたら和己へのメールには使ってるかもしれないなと思うと、あながち外れていなさそうで怖い。 ともかく、メールには簡潔に用事だけが書き込まれていた。 『土曜、部活終ったらうちに来い』 週末とはいえ部活が終ってからということは、もう夜になってからだ。今週の日曜日は珍しく朝の練習が無い日なので問題は無いけど・・・と考えて、利央は一人赤面した。 週末に家へ誘われたということで、何を一人で深読みをしているのかと自分で自分が恥かしくなる。何も深い意味なんて無いかもしれない、偶々、準太の都合が空いている日が金曜の夜というだけかもしれない。別に明確に泊まりに来いと言われたわけでもあるまいに、そもそも準太の家族だっているだろう。 (バカバカしい、一人で何妄想してんだオレ) 慎吾が何か関わっているのではないかと考えるから、思考が深みで空回りするのだ。あまり考え込むのは止めようと頷き、利央は睨みつけていた画面を返信の画面へ移す。 そして、了解の旨だけを送信した。すると程なくして準太からまたメールが届き、それを開いた直後利央は首筋まで赤く染まった。 『泊まれる準備、して来いよ』 これに対しては、深読みして良いものかどうなのか利央には判断がつかず、一人赤くなりながら久々に会えることに素直に喜びを感じてもいた。 部活の後、泥だらけの格好で直行するわけにも行かず、また部活にお泊りセットを持っていくわけにも行かなかったので、利央は一旦家に帰って荷物を持ち替えて家を出た。 準太の家はチャリで十分少し、利央はその遠くは無い道のりをそれでももどかしげに立ち漕ぎで飛ばした。 「よお、早かったな」 肩で息を切らせる利央を出迎えたのは、休日用のラフな格好の準太だった。今から行くとメールを送ってから十分弱、一目で急いで来たと分かる利央に彼は軽く笑った。普段ならばそこで頬の一つも膨らませる利央だが、今日はただ、目の前で直に微笑まれたことが嬉しかった。 「うん、急いできた」 いつになく素直にそう認めた利央に、準太もまたいつもより穏やかに返す。 「お疲れさん」 そう言って玄関の扉を広く開けた準太に迎え入れられた利央は、何度も訪れたことのある玄関の三和土に靴の数が揃っていないことに気付いた。 「あれ、準サン。おじさんとかおばさんは?」 すると準太は利央の背後で玄関に鍵を閉め、チェーンまで下ろしてしまった。 「オレ以外は皆、家族旅行」 下ろされたチェーンの男に何故だか肩を揺らした利央は、脇をすり抜けて先に玄関へ上がる準太をマジマジと見つめた。 「灰色の受験生を一人置いて、だぜ。酷ぇよな」 そう言いながらも準太の口調は台詞ほど沈んではいなく、寧ろ弾んでいた。そのことに付き合いが長いからこそ感じる悪寒を伴いながら、利央はおずおずと玄関へ上がる。 「へ、えー・・・そりゃ残念だねぇ。てことは、夕飯は?」 部活から帰って慌しく出てきたので、利央はまだ食べていない。大抵準太の家に来るとその母が何かと食べさせたがるので、今回もそれを当てにしていたのだ。 「作ってったカレーがある。ったく、自分たちは旅館で刺身三昧だろーってのに」 ぶつぶつ文句を言う準太に、カレーだろうが何だろうが胃に収まるものがあるのならそれで良いと胸を撫で下ろす。同時に腹の虫が鳴って、それを聞きつけた準太が盛大に噴出した。 「お前、うちに飯食いに来たのかよ」 準サンに会いに来たんだとはさすがに言えず、利央は一人で膨れながら赤くなった。 「まぁいーや、とりあえず部屋に荷物置けよ」 置くほどの荷物でもないのだが、家主がそう言うのならそれに従わないわけにはいくまいと、利央は準太に付いて彼の部屋に入る。 以前来た時とさほど変わってはおらず、しかし机の上に投げ出されたように散乱しているのは野球雑誌ではなく参考書や問題集だ。 「受験生の部屋だねー」 思わず感嘆の声を上げた利央は、そのままベッド脇に適当に鞄を下ろして机に近付いた。利央には理解不能な数式やら習っていないと思われる英単語の羅列、それらが開いたままになっているノートに準太の文字で並んでいて、改めて彼は受験生なのだとしみじみする。 パラパラと興味本位でそれらの問題集や参考書を眺めていた利央は、準太が背後に立ったことにも全く気付かなかった。 「え・・・っ」 突然、項に暖かい体温を感じたと思ったら、腰に腕が回されていた。 「ちょ、準サン!?」 触れたのは彼の唇だとすぐに分かるが、続いて湿った舌が項を舐め上げて利央の背筋にゾクゾクと悪寒が走る。悪寒と言うよりは、期待、だったのかもしれないが。 腰に回された腕は身を捩ろうとする利央の身体をしっかり押さえていて、もう片方の手は利央のシャツの裾を割って脇を撫で上げた。 「やっちょ、おいっ」 急いで自転車を漕いできた為に未だ汗の引いていない身体を、体温の低い準太の手が這い回る。膨らみの無い胸を撫で上げられて、利央の肩がびくんと揺れた。 「汗くせ」 背後から首筋に噛み付いて、準太がぼそりと呟く。 「だったら、離れればいーだろー!?」 泊まりに来いと言われたからには、今までのことを考えても覚悟はあった。けれど、盛大に腹まで鳴らした自分に、いきなりしかけてくるとは思ってもみなかったのだ。 「なんで。お前の匂い、嫌いじゃねーよ?」 その上、いつもならば絶対に言わないような台詞までご披露してくださって、利央はもう何が何だか展開に付いていけない。 「準サン、準サ・・っ、ね、ちょっと!オレ、腹減ってんだって、ば・・っ」 耳朶の裏を吸い上げられ、胸の突起を指の腹で弄られる。摘まれ引っかかれ、利央はその度に声に出せない喘ぎを漏らす。 「ここまできたら、もう止まるわけねぇだろ」 バカか、と何故か暴言まで吐かれて、利央の目尻に涙が浮かぶ。 胸に回っていた手が背中に回り、シャツを捲り上げ背中が晒される。煌々と蛍光灯が灯された室内で、野球をしていても日に当たらないその背中は、白く浮かび上がって見える。 「ひゃぁ!?」 露になった背骨一つ一つを辿るように、準太は舌で腰の辺りから肩甲骨の辺りまで舐め上げる。そして、いつの間にか机に腕を付いて身体を支えている利央の、隆起する肩甲骨に噛み付いた。 「すげえ久々、マジ食い尽くしてぇ」 背中を向けている為表情は見えないが、準太のその声に一欠片の冗談も含まれていないことを利央はしっかり感じ取っていた。 「オレは、カレーが、食いたいっけど・・っ」 背中中嘗め回されて、くすぐったさの中に確かな快感が芽吹いてくる利央は、それでも必死に流されまいと足を踏ん張った。 彼と抱き合うのは嫌ではない、嫌ではないが今の彼は何か不安を抱かせる。空腹であるのも事実だ。 「後で三杯でも四杯でも食わせてやるよ」 言いながら、腰を抱いていた準太の腕が利央の下肢に伸びて、脇腹を強く噛まれた。 快感と痛みを同時与えられ、利央の喉がひゅっと鋭く締まった。派手に捲り上げられたシャツは後頭部で止まり、ただでさえ上がる呼吸を更に引き絞る。 「あぁ、もう・・・本当に鍋一つ空にするからね!」 そう言って腹を括った利央は、机に付いていた腕を引き剥がしてシャツを脱ぎ捨てた。広げられた参考書や問題集が崩れるも構わず机の上にそれを放り出し、利央は緩んだ準太の腕の中で勢い良く振り返る。 「上等」 そして本日最初の、キスをした。 ぶつけるような挑むようなキスはすぐに濃厚なそれに変わり、準太の手は利央の背中とそれに連なる双丘を撫で回し、利央の腕はしっかりと準太の首に回される。 「ん、ふ・・っぅんっ」 「は・・・あ、ぁー」 溢れる水音すら勿体無いと言わんばかりに顎に伝う唾液も舐め取り、準太はすっかり興奮の色をしめしている下肢を利央に擦り付ける。 「あ、は・・すご・・・」 机に半分腰掛けるようにして準太の熱を感じ取った利央も、同じ様に熱を持った腰を強請るように揺らす。今から、この熱が自分の中に埋め込まれると思うと、利央の胸は期待に戦慄いた。 それなりに自分で処理はしてきたけれど、やはり相手がいるのといないのとでは大違いだ。裸の胸に擦れる相手の洋服の感触も、傍若無人に這い回るしっとりと汗ばんだ手も気持ち良い。 「準、サン。あ、ねぇ、脱い、で」 ズボンの中に背中側から手を差し込まれて、利央は喘ぎながら呟いた。自分だけが脱がされていくのは気恥かしかったし、布越しよりも直に準太の素肌を感じたかった。 「あー?しょーがねーな・・・」 本当ならこのまま利央の準備を進めてしまいたかった準太だが、久々に間近で覗き込めた色素の薄い利央の瞳に張った薄い涙を唇で掬い取ると、一旦身体を離してシャツが裏返しになるのも構わず脱ぎ捨てた。そしてズボンのポケットから取り出した携帯を無造作にベッドの上に放ると、ついでとばかりに利央の肩を掴んでそこに座らせた。 「オレ、携帯じゃないんだけどー」 文句を言いながらも足の間に腰を下ろしてくる準太の髪に指を差し入れ、利央は目を細めて準太の指がそこに伸びるのを見ていた。 「・・ん」 準太の指が迷い無くジッパーを下ろして、下着の中から既に軽勃ち上がっている利央の性器を引き出した。そして指で軽く扱き上げながら、徐々に息の上がっている利央の様子を楽しそうに眺めている。その先端からは既に先走りが滲み出て、準太の指を濡らす。 「はっ、ふ、ぅうっ、ん」 準太が利央の弱いところに爪を立てる度に、利央の内股が引きつって腹部が波打つ。そして噛み締めたような嗚咽が漏れて、見上げると目尻を紅潮させた利央が目を眇めて準太を見下ろしていた。 「気持ち良いか?」 「ん・・っん」 尋ねながら一層強く扱き上げると、利央は小さく頷きながら赤い舌で唇を舐める。それが普段の子供染みた彼の様子からかけ離れて艶っぽくて、準太は己の背筋が快感に震えるのを感じた。 「もう少し、待てよな」 あと少しで果てるというところで手を離した準太は、不満そうに眉根を寄せた利央のこめかみに軽く口付け、利央の足からズボンと下着を一緒に脱がせた。 そして二人で向かい合うようにしてベッドに上がると、準太は簡単に利央の足を肩に抱え上げた。 「次は、こっち」 「あ、」 利央の先走りで濡れた指で、更に奥の窄まりを撫で付ける。利央は怯えたように声を揺らしたが、準太がそこに指を差し入れることを止めはしなかった。 「う・・・」 久方ぶりで、初めは侵入を拒んでいたそこも、何度か抜き差しを繰り返す内に覚えこんだ快楽を思い出したのか柔かく解けてくる。 「あ、あ、ん・・・ぁ、やぁっ」 二本に増やされた指に中を広げるようにされ、利央の口からはだらしなく嬌声が上がる。激しく上下する胸の突起はもう触れられていないにも関わらず硬く立ち上がり、準太はそこに唇を寄せながら喉を鳴らした。 「利央、お前、自分でやった?」 ここ、と言いながら指をもう一本増やした準太の耳に、苦痛からではない利央の声が跳ねる。 「あぁっ!」 硬くはなっていたけれど、すぐに解けたそこに準太はおかしくて堪らないと言ったように乱暴に掻き回す。短く高く跳ねる利央の喘ぎに、準太は重ねて同じ事を尋ねた。 「や・・っ、ない!そ、なの・・っ」 ぐちゅぐちゅと音を立てながら突き入れられる準太の指に、利央の性器はピクピクと解放を求めて頭をもたげている。 「ふうん、してねぇ割には随分早く準備できたな?自分でしてねぇってことは・・・他の奴とヤった?」 楽しそうな準太の声音は、百パーセントそんなことを信じてはいない証拠だ。ただ、口先だけだとしても疑われた身としては、応えないわけにはいかない。 「するわけ・・・ないっだろぉ!準サンの、ばかあ・・・っ」 いくら後ろに快楽を与えられても、利央の身体はまだそれだけで達することができるほどではない。ぐずぐずと腰に溜るだけ溜って、けれど決して解放されない熱に利央はもどかしさに腰を振った。 「でも絶対、ここ早すぎだろ?ほら、もう三本咥えてんだぜ?」 三本の指を深く埋め込んだまま利央の腰を揺すってやると、肩に乗った利央の足がびくんと跳ねる。 「ほら、りーおう、正直に言ってみな?自分でしたのか?浮気したのか?」 言わないとこのまま、前は放っておくぞと残酷なことを囁かれ、利央はしばらく喘いだ後観念したようにやけくそ気味に叫んだ。 「自分でしたっ・・・・」 準太と抱き合うことを覚えてしまってから、前だけの刺激では物足りなくなっていた。前だけでも果てることはできるけれど、その後どうしても後ろが疼くのだ。だからといって、他人では意味が無く、利央は本当に我慢なら無い時にはそこを自分で慰める術を覚えた。 「正直。よくできました」 利央が自分で自分を慰める、しかも前だけでなく前後両方。その様を想像しただけで準太の喉はごくりと鳴り、羞恥で首まで真っ赤に染める利央にご褒美と言わんばかりの優しい口付けを落した。 「今度、自分でほぐしてみるか?」 「すっるか!」 耳朶の形をなぞるかのように舌を這わせながら、爽やかとも言えそうな口調でそんな事を吹き込まれ、利央は真っ赤になって叫ぶ。 「燃えると思うけどなぁ」 何故拒否されるのか分からないといった様子で笑う準太に、利央は今日の彼は絶対おかしいと眉根を寄せた。 「準っさん!何か悪いモンでも、食っ・・た!?」 何度も感じる個所を突き上げられ中で指を広げられ、もどかしさに自ら腰を揺らしながらも利央は乱れる呼気で喘ぎながらも準太を見上げる。 「今、利央を食ってる最中」 準太は額に汗を浮べながら、そう言って利央の鎖骨に歯を立てた。 (絶対、おかしい!!) たとえ情事の最中気分が高揚していても、こんな歯の浮くような台詞を吐く準太ではなかった。久しぶりに触れ合えることが嬉しくて仕方が無いことは事実だが、その反面まだ理性の残る利央の頭の片隅では、警告音が鳴り始める。 「お前、集中してねぇだろ」 喘ぎながらもどこか視線の定まらない利央に、準太が不機嫌そうに彼の胸を吸い上げた。 「っつ・・」 鋭く小さな痛みが走り、そこに赤い痕を残されたのを知る。そしてそのままいつの間にか尖りきった利央の胸の突起を、口内に含む。 「あぅっ」 ちゅうと吸い上げられ、舌先で押しつぶすように舐められ、前歯で引っ掛けるように擦られて利央の喉が仰け反る。その間にも利央の体内に埋め込まれた三本の指は、内壁を擦り上げ感じる一点を責め上げ、利央の息は盛大に乱れ始める。 「あっあっ、ん、あっや!準サン、準サン・・!!」 胸元で擦れる準太の黒い髪を必死に掴んで、利央は目尻から涙を零す。 「や、も、準サン、ね、ぇ・・っ」 身体の奥からズクズクと重い快感が湧き出てきて、指だけでは足りないと利央の腰が自然と揺れだす。自ら足を大きく開いて、快楽の涙を零す性器を圧し掛かる準太の腹に擦りつける様にして利央は強請った。 「はや、く・・ねぇっ」 長い指がもどかしげにシーツをかき集め、利央は上半身を捩って準太の枕に頬を付ける。 「挿れたい?」 ずるんと指が引き抜かれ、利央は一際高く泣いた。そして恐らく次に訪れるであろう圧迫感に備えて目を閉じ大きく息を吐き出したが、くるはずの衝撃は訪れず、準太が利央の頭上に手を伸ばした気配を感じて不審に思い目を開ける。 「準サン・・・?」 乱れた息で名を呼ぶと、準太は軽く起き上がって何やら携帯を構えている。そして。 ピロリン。 場に似つかわしくない明るく軽快な音がして、フラッシュが利央の裸の肌に降り注いだ。 「・・・・・・・・・・は?」 一瞬何が起こったのか分からず呆然とした利央だったが、携帯を構えた準太の口端がにやりと上がるのを見て羞恥が一瞬で頂点に達した。 「な・・・あんたっ、今何をしたぁ!?」 それまでの甘い快楽も投げ捨てて、利央は色気皆無の怒鳴り声を上げた。しかし準太はそれに全く動じず、もう一度、携帯の撮影ボタンを押す。 「ちょ、何してンの!?変態!」 顔を隠せば良いのやら身体を隠せば良いのやら、既に一糸纏わぬ姿になってしまっている利央は全身を真っ赤に染めて逃げ出そうとする。 「逃げてんじゃねぇよ」 準太は片手に携帯を握ったまま、逃げようとする利央に覆い被さって体重をかける。そして空いた手で利央の後孔をするりと撫でた。 「減るもんじゃねぇんだし、良いだろ別に」 「良くない、絶対よくない。こんな変態プレイ、付き合いたくな・・っ」 断固として拒否をする利央に準太はむっと眉根を寄せると、撫でた秘所に再び指を潜らせた。 「あぅ・・っ」 横から抱き込まれるようにしてすっかり解れたそこに再び違和感を感じ、利央は小さく肩を震わせる。そのまま浅く抜き差しを開始され、耳朶に歯を立てられて利央は嫌々と首を振る。 「いいじゃねぇか、前みてぇに会えないんだぜ?こん位、愛しい準サンに協力してくれても、良いんじゃね?」 身を硬くして背中を丸める利央の眼前に、携帯を持って行って準太はシャッターを押す。ぎゅっと瞑った目尻から涙が零れて、利央は暴れたが同時に埋め込まれた準太の指がぐりゅ、と深くを抉って悲鳴を上げた。 「駄目?利央」 自業自得といえる所作で準太の指を締め付けてしまった利央に、彼は尚深くまで抉るように指を動かす。解すためでも慣らす為でもなく、それは既に利央に快感を与える為だけの行為になっている。 「や、だめ、だめ・・っや、だ・・っ」 ぐしゅぐしゅと乱れた水音が利央の聴覚を犯し、眼前に煌く無機質なレンズが羞恥心を煽る。それでも身体の奥から沸いてくる快楽には勝てず、しかし望むだけの熱と硬さは決して与えられずに利央は焦れてすすり泣いた。 既に利央の腹の上にそそり立った性器は、先ほどから最後の刺激を待ち望んで打ち震えている。横抱きにされたことで太股の裏には、準太の熱が押し当てられている。 「駄目?」 太股に押し当てられたその熱と硬さに、利央の頭はぐずぐずと沸騰し始める。早く、その熱を埋め込んでしまって欲しかった。指でも彼は利央のポイントをしっかり煽ってくれるけれど、やっぱり一番熱いモノで愛撫して欲しい。 でも、それを携帯に納めるという行為だけは、受け入れるわけにはいかない。それが所謂ハメ撮りと言われるものだということは利央も知っているし、そういうプレイがあることも知っている。 しかし、それが相当にノーマルとはかけ離れている行為だということも、しっかり認識している。 「だめ、やだ、や、や、ぁ・・・っあ!」 利央が嫌だと言う度に、準太が利央の良いところを掻き回す。しかし彼の片手は携帯で塞がっている為に利央の前には刺激が与えられず、思わず伸びそうになる自分の手を押し留めてだらしなく嬌声が上がる口を塞いだ。 「ふうん、駄目なわけ」 つまらなそうに準太は耳元でそう囁くと、またしても利央の体内から指を引き抜いた。 「ぁん・・!」 先ほどから煽られるだけ煽られて、それでも果てられないもどかしさに利央が思わず甘えた声を上げると、準太は何を思ったのか携帯を一旦離して、利央の身体を反転させた。 「しょーがねぇなー」 そして、利央の性器の根元を握りこんだままそこを扱き上げ始めた。 「ああぁぁああ!あ、あ、あ、あっや!準サンっ、苦し、いぃ・・」 もうかない限界まできていた利央の性器は、パンパンに張り詰めて準太の手の中で震えた。先端に爪を立てると利央は高い声で鳴き、強く握ると掠れた悲鳴を上げた。 「駄目、なんだろ?だったらこのままやめなきゃ駄目?なぁ、利央、やめるか?駄目なんだろ?ん?」 「ちが・・っ、や、そっちのハナシじゃ、なぁ、あ、あ、あ・・・!」 あくまでも利央が言っているのは写メールで撮るのを止めてくれという話であって、行為をやめろというわけではない。準太もそれは当然分かっていて、こんな無体なことをしかけている。 「じゃ、やめるか」 そしていきなり、本当に唐突に準太は利央から手を離した。 「は・・・っ」 突如放り出された利央は、胸を大きく上下させて潤んだ目で準太を見上げている。恨めしそうな色も含むその視線に、準太はどうする?と口角を上げて笑いかけた。 蛍光灯の明かりを背に笑う準太のその顔は、利央にとってまるで悪魔の様に綺麗に見えた。 「やめ、ないで・・・」 そして自分は、悪魔に差し出された生贄よろしく、彼の望むものを望むだけ差し出してしまうのだ。結局のところ。 「駄目じゃねぇってこと?」 楽しそうに目を細める準太に、利央はくしゃりと顔を歪ませて、それでもこくりと頷いた。 「良い子、だな」 汗で張り付いた前髪を掻き上げて、準太はちゅ、と額にキスをした。その手で今オレの性器扱いてたよね、とか利央は思わなくもなかったが、もうここまでドロドロになれば同じことだと、ただ目を閉じてそれを受け入れた。 「久々だから、今日は優しくしてやるからな。嫌なら嫌だって言え、止めたいならそう言えよ。その通りにしてやっから」 「あんた、ねぇ・・・っ!」 それはつまり、止めて欲しくなければたとえ最中に携帯を向けられても拒否するなということだ。勿論、利央が準太とヤりたいという前提があってこそ成り立つ企みなのだが、ここまで追い詰められて利央が今更止めるなんて言えないことを彼は充分に知っている。 「さいってー、もー、ほんとにっ」 羞恥からだけでなく目尻を真っ赤に染めた利央に、準太はにやんと笑うだけでそれを受け流す。そして勢い良く利央の足を抱え上げると、既に準備万端の己のそれを利央の後孔に押し付けた。 「は・・っ」 反射的に息を吐いて力を抜こうとする利央のタイミングに合わせて、準太は一気に腰を進める。 「んーっ!」 いきなり奥まで突かれて利央は歯を食いしばったが、それでも利央の性器は萎える様子を見せず、ただようやく与えられた熱に歓喜しているだけだった。 「あー、久々・・・いい・・」 狭くて暖かいそこの感触を楽しむかのように準太が笑い、再度携帯を拾いあげる。もうそれを指摘する気力も無くて、利央はただ動いてくれない準太に自ら腰を揺らめかせて誘う。 「はやく、じゅんさん、はやく・・っ」 ドクドクと自分の中で脈打つ準太自身に利央の頭は沸点を越えて、もう下らない常識など蒸発してしまった。 「はいはい」 口をだらしなく開いて、ただ解放を求める利央の表情は堪らなく退廃的でやらしくてイイ。そう思うと準太は遠慮無しに利央の腰を揺さぶり始めた。 「あ、あ、あっん、ふぁ、ん、ん」 「イイ?利央?きもちいー?」 「ん、いい、いい、準、サンっ。あ、あ」 シーツを握りしめて、足を準太の腰に絡ませて、利央はただ喘ぐ。時折準太の動きが止まり間の抜けたシャッター音がすると目を開けて、恨みがましそうに準太を睨み上げた。 「駄目?止める?」 顎を伝って落ちる汗をそのまま拭うこともせずに準太が尋ねると、利央は得られない快感にもどかしそうに口をはくはくさせて、止めないでと呟いた。 「駄目じゃないのか?」 緩く揺するようにわざとすれば、利央は耐えられないとばかりに自ら強く腰を押し付けてくる。 「じゃない、駄目じゃないから、早く、ねぇ、イかせて・・っ」 携帯のことなど頭から飛んでいるのではないだろうかと思う積極的な利央に、準太は笑って再度腰を打ち付けてやる。 「あぁ、ぁ、イイ、イイ、準サ・・っ」 それから何度か戯れに行為を中断して利央の上気した顔やら屹立した性器やらに携帯を向けて、その都度利央に駄目じゃないのかと確認して焦らしながら、準太は思う存分自分を欲しがる利央を堪能した。 結局、本当に鍋を空にする勢いでカレーを貪ってやった利央だが、それ以上に利央を貪りつくした準太にとってそれは痛くも痒くもない報復でしかなく、利央はただふてくされて居間のソファを占領していた。 「なぁに拗ねてんだ、お前みてぇな駄犬が拗ねても、可愛くねぇぞ」 そのソファを背もたれにしてリモコンで適当な番組を探しながら、準太の視線はテレビに向いたたまま。 「あんた・・散々好き勝手しといて、その言い草なんすか・・?いいですけど、いいですけどね!?準サンがそんな人だって、分かってたけどさぁ!」 あれだけ好き勝手しておいて、可愛くないもなにも無いだろうと利央は思うが、そこは言わないでおくのが後輩の務めというものだろう。可愛くない人間のあられもない姿を携帯に納めるなんて、悪趣味にもほどがあるとかも、飲み込んでおいてあげよう。 多分、今日の準太は、多分だけど、自分の希望も大いに混じっているけれど、自分と同じくらい飢えていたんじゃないかと思うから。 「準サーン」 だれた口調で呼べば、これまたアー?とやる気の感じられない返事が返ってくる。 「好き」 熱の篭もらない告白をした利央に、バカじゃねぇのかと準太は冷たく返し、そして暫くして、利央が自分の発言を忘れたくらいの時間を経て、ぼそりと彼は呟いた。 「だったらお前、他所の男に寝顔なんて撮られてんじゃねぇよ」 誰の話なのか全く分からず、え?と首を傾げた利央の頭に準太の盛大なチョップがめり込んだ。 苦労した、苦労したよこの話・・・!!久々のエロ、難しいよ!難しすぎたよ!!別人、別人過ぎる・・ごめんなさい。 心持ち「どらやき60個下さい」の後日談です。 |