狂い愛







 狂っているのかもしれない。
 そんな風に考えることはしょっちゅうだ。
 狂っている。
 そんな確信を抱くことすらある。例えば、今。
「ぁ・・っ、し・・げ・・ぇっ」
 竜也はフローリングの床の上で切なそうに腰を揺らす。シゲは竜也の目の前で胡坐を組んで、こちらを眺めるだけだ。その視線が竜也の顔から滑り落ちて、股間の辺りで止まる。すぐに口元に浮かんだ下卑た笑みに、竜也の目尻から涙が流れた。
「おねが・・っ。取って・・・ぇ」
「何を?」
 シゲは竜也の股間を眺めながら、指をぺろりと舐める。舌に甘い味が広がった。
「生・・くりーむ・・っ。気持ち悪い・・っ」
「自分でやれば?」
 冷たく突き放すような声に、竜也の肩がびくりと揺れ、それと同時に膝も揺れる。
「無理に、決まって・・!!」
「それもそうか」
 シゲはくっくっと楽しげに笑う。竜也は唇を噛み締めて、ぎゅっと目を閉じた。途端に不機嫌になったシゲの声が聞こえる。
「何、目ぇ閉じてんねん。誰が、ええ、言うた?ここも、縛られたいんか?」
 シゲが腕だけ伸ばして、竜也の性器の根元をきつく握る。
「やだっ」
 竜也が悲鳴を上げる。熱く猛った竜也の性器の熱でやや溶けた白い生クリームの、ぬるっとした感触に、シゲは再び機嫌を良くする。
「やったら、ちゃんと目、開けとけや」
 竜也は、恐る恐る瞼を持ち上げる。それを見届けると、シゲはあっさり手を離してしまう。そしてまた同じように座って、竜也に視線を投げかけるだけ。
「し・・げぇっ、もう、許し・・て・・」
 ただ見られるだけの責め苦に、竜也はもうそろそろ耐えられなくなってくる。別に竜也が自意識過剰なわけではなく、格好が格好なせいである。
「何で?似合うとるよ?こないだみたいに手首縛るだけじゃ、たつぼん学習せぇへんのやもん」
 しゃあないよなぁ。笑いながらシゲは、まだ手元にあった、無事なほうのケーキに手を伸ばす。それは、二人して竜也の家に帰ってきたときに、真理子が出してくれたものだった。それを、真理子がクラシックのコンサートに出かけたのをいいことに、シゲはとんでもないことに使い始めた。
 まず、ケーキの箱を縛っていた可愛らしいピンクのリボンを縦に裂いた。そして、竜也の下肢をあっさり裸に剥くと、あろうことか両手首と両足首を括りつけたのである。
 つまり竜也は現在、体育座りで両足首の外側に、両手を括りつけられているような格好を取らされている。
 そしてそのまま、シゲは竜也の胸元をはだけさせると、ケーキを握り潰して胸に塗りたくった。ぬめる未体験の感触に、元々敏感なほうの竜也の素肌は、すぐに桜色に染まり、ピンクの乳首は真っ赤に熟れていった。
 シゲは竜也の胸に広げられたケーキを、しつこいくらいに肌を嘗め回して食べながら、決して直接乳首を愛撫しようとはせず、最後に残った生クリームを、そのとき既に反応していた竜也の性器に塗りつけたのだった。
 先走りの透明な液と、生クリームの白さが十分に混ざり合うまで何度も擦り上げられて、竜也が限界を訴えた途端、シゲはあっさりと傍観者の席へ座ってしまったのだ。
「ごめ・・っ、も・・しな・・いっ」
 こんなことをされるほど、悪いことをしたとは思えないのだが、それでも今の状況から抜け出せるなら、いくらでも謝れる。そんな心境だった竜也は、必死でシゲに許しを乞う。濡れた瞳でシゲを見つめて、何度も謝罪を繰り返す竜也に、それでもシゲは動かない。時折舌で唇を湿らせながら、ただ竜也の全身を眺めるだけ。
「シゲ・・っ。もう、ホントに・・、誰にも触られたり、しないっ・・か、ら!」
 ただ見られている。それだけなのに、竜也の性器は下腹部に付くほどに硬く立ち上がり、先走りを溢れさせ続ける。その先走りが生クリームを押しのけて、ぬりゅ・・と竜也の性器の上を滑る。
「ふ・・んっ」
 その微妙な刺激がもどかしくて、何とかもっとはっきりとした快感を得られないかと、竜也は大きく腰を揺らすが、ぬめる生クリームがまた少し動くだけで、快感にはほど遠い、むず痒さだけがつのる。
「しげ・・っ、ね、おねが・・!・・んでも、するっ」
 桜色に染まる身体をくねらせて、届かない快感を必死で求める竜也に、シゲの性器も反応しないわけは無いのだが、シゲはそれを必死で押しとどめている。
 下肢は靴下を残して後は全裸で、上半身もかろうじてシャツを羽織るだけ。そんな中途半端な格好で、瞳から綺麗な涙を流しながら、性器からは先走りを溢れさせて腰を振る。そしてその性器には、生クリームなんかが塗りたくられている。
「たつぼんて、ほんっまに淫乱やねぇ。そないに腰振って」
「や・・ぁっ!シゲ・・ぇ」
 その光景は眉をひそめたくなるほど浅ましくて、エロティックで、更には体中から生クリームの甘ったるい匂いがしてくる。
 そんな竜也を前にして、よく我慢できるなと、シゲは自分を褒めてやりたくもなる。本当は、今すぐ押し倒して自分のモノで貫いて、快感で理性が完全に吹き飛ぶくらい、抱いてしまいたかった。
 けれど、まだもう少し・・・とブレーキを掛ける。
「しゃあないなぁ・・・」
 シゲはおもむろに立ち上がると、竜也の椅子を引いてきて、それに腰を下ろす。そのまま竜也の目の前まで移動して、座り込む竜也の顔の高さに合わせて、椅子の高さを調節した。
「いっぺん、イかせてくれたらな」
 言いながらシゲは、もうすっかりズボンの中で窮屈そうにしていた己の性器を引っ張り出す。そしてその上で、今手に取ったケーキを潰した。
「ほら、何でもするんやろ?」
 シゲは身動きの取れない竜也が咥えやすいように、椅子に浅く腰掛けなおすと、竜也の顔にケーキを塗ったペニスを近づける。
「ふ・・う、んん・・」
 竜也はすぐにシゲの性器に舌を伸ばしてくる。手で支えたり擦ったりするわけにはいかないので、その愛撫はシゲ自身もどかしいくらいだったけれど、手足を縛られた竜也が、首だけを伸ばしてシゲの一物に舌を這わせる光景は、思ったよりも視覚的にキた。
「あぁ・・・ふぅ・・」
 浅く吐息を漏らしながら、竜也はシゲのモノに浮き立つ血管に舌を這わせる。そしてぴちゃぴちゃと、ケーキのスポンジやら生クリームやらを舐め取っていく。口に運ぶことに失敗したケーキの残骸が、竜也の顎を伝って床にぼたぼたと落ちた。
その間も竜也の性器はピクピクと反応しながら、限界を待ちわびている。
「・・たつや・・・っ、・・まい?」
「んんっふ・・、いし・・」
「ほたら、もっとちゃんと咥えろ・・っや!」
 もどかしい愛撫に耐えられなくなったシゲは、自分の自由な手で竜也の頭を引き寄せると、無理やり喉奥に自分の性器を突っ込んだ。
「ぐ・・っ」
 苦しげに呻く竜也だったが、不安定な姿勢を取らされて、無理に喉奥に押し込まれた性器の先走りの苦味と、生クリームの甘さが喉を濡らすと、竜也の性器が一層質量を増した。
 そのまま必死でシゲのモノを吸い上げ、時折歯で軽く刺激したりした。
「・・っは・・、イク・・っ」
 シゲは短く呻くと、竜也の喉に精液を叩きつけた。竜也は眉根を寄せながらも、シゲの精液を全て嚥下する。最後の一滴までちゅ、と吸い上げてから、竜也は口を離した。
「たつぼんも、イった?」
 シゲが見下ろす先で竜也の下腹部は、生クリームとはまた違った白濁の液で濡れていた。
「・・った・・・」
 耳たぶまで朱色に染めて小さく答える竜也に、シゲは尋ねた。
「じゃ、お互いに出すもん出したし、今日はおしまいにしよか?」
「え・・っ」
 竜也が慌てた様子で、見上げてくる。その不安げな表情に、シゲの背中は震えた。
「ん?まだ何かある?」
 わざととぼけて言ってみれば、竜也はどうしたら良いのか分らないと言うように視線を彷徨わせる。
「あぁ、これか?」
 シゲは忘れてたわーと言いながら、椅子から降りる。そして自分のズボンのジッパーを上げてしまってから、竜也の胸に手を伸ばす。
「は・・っ」
 途端に息を詰める竜也。
「べとべとやね。ちゃんと、後始末したるからな」
 乾いてしまったケーキの残骸を舐め取るように、シゲは竜也の胸元に唇を寄せる。
「あ・・ぁ・・・」
「甘いわ、たつぼん、めちゃ甘」
 鎖骨を辿り、胸の真ん中を通りながら乳輪だけを舐めて、乳首には触れもしないで、シゲの舌はへそまで滑っていく。程よく筋肉のついた腹を嘗め回して、時々掠めるようにわき腹に歯を立てた。
「っく・・は」
 竜也の精液の飛沫も舐め取ってシゲが一度顔を上げると、竜也の目元は再び潤み始めていた。
「し・・・げ」
 竜也がねだるように名前を呼ぶ。シゲは、何?と視線で聞く。
「こ・・も・・。ね、ちゃん・・と」
 上体をよじる竜也の胸では、二つの乳首がぷつんと硬く立ち上がっている。先ほどから一度もまともな愛撫を受けていないそこは、竜也の性感帯のうちでも三本の指に入る位、敏感なところだった。
「ちゃんと、何?どうしてほしいん?」
 シゲが意地の悪い笑みを浮かべると、竜也は一瞬口を閉ざしたが、すぐに荒い息と共に小さく願望をもらした。
「舐めて・・・」
「ホント、どうしようも無いなぁ」
 くすくすと楽しそうに笑うと、シゲは待ちわびている竜也の乳首に、軽く口付けた。
「はぁっ・・ん!」
 瞬間、背中を駆け上がってきた快感に、竜也は思わず嬌声を上げる。その声に気を良くしたシゲは、やや乱暴にそこを吸い上げたり噛んだりし始める。
「あっあっ・・、いった・・!」
 大きく背中を逸らしながら、竜也は苦しげに呼吸する。シゲの口内で、竜也の乳首は真っ赤になって、女のもののように硬くしこっていた。
「しげっ、しげ・・ぇ!な、あ・・、も、かたっぽ・・・も」
 今度は、竜也はシゲに促される前に自ら淫らに要求する。
「つま・・・で、ひっぱ・・・」
「こうか?」
「はぁっ・・ん!いっ・・」
 痺れるような痛みは、すぐに快感に摩り替わる。未だ縛られたままの手足の間で、竜也の性器は再び頭をもたげていた。
「たつぼん、あとは?」
 乳首から一旦舌を離して、シゲは首筋に沿って上がり、竜也の耳元で囁いた。竜也は、鼓膜を震わせるシゲの声に、思わず首をすくめながら、たがの外れた性欲でもって、素直に懇願した。
「下・・も」
「下、て?こっち?」
 シゲは空いているほうの手で、竜也の性器を握りこむ。
「あっふ・・、もっと・・下・・・」
 竜也はシゲを誘うように、更に両足を広げる。ここまでくると、竜也は完全に性欲の虜だ。シゲも遠慮無く、攻め立てられる。ちなみに、今までは手加減してたのかなどという突っ込みをいれることすら、竜也の頭には浮かばない。
「もしかして、ココか?男のくせに?ココ、いじって欲しいん?」
 シゲは床に散乱するケーキの残骸を指で指で掬い取って、その指を竜也の秘孔につぷ・・と第一関節辺りまでを埋め込む。
「んっ・・」
 待ちわびていたように、収縮を始める入り口で、シゲの指は浅く抜き差しを繰り返すだけで、決してそれ以上進もうとはしない。焦れて腰を揺らす竜也に、シゲは相変わらず耳元で、囁いてやる。
「男なんに、ここが、感じるん?変態?」
 ぎゅっと竜也は瞳を閉じる。目尻から涙が零れた。シゲはその涙を舐めとってやりながら、苦笑する。
「泣かんでもええやん?気持ちええんやろ?こことか」
「ひぁ・・」
 きゅうっと乳首を摘み上げると、竜也は甲高い悲鳴を上げる。
「な、ええ?」
 竜也は言葉も無く、ただこくこくと頷いた。シゲは宥めるように頬に口付けながら、竜也の秘孔でくるりと輪を描くような動きを加える。
「たつばん、言うてみて?もっと入れて、て。ぐちゃぐちゃに掻き回して、て言うてごらん?」
「あぁ・・ふうっん」
 ずっ、といきなり指を奥まで突き刺して、シゲが囁く。しかし、入れただけで動かなくなったシゲを、竜也は薄く瞳を開けて抗議するかのように睨み付ける。
「言うて?」
 再度促すシゲに、竜也は再び目を伏せる。
「もっと・・・」
「もっと、何」
「もっと、いっぱい、掻き回・・・て」
 もし今手が自由だったら、絶対竜也はシゲにしがみついて顔を肩に埋めてしまっていただろう。けれど、それは今叶わないので、赤面する竜也の表情を思う存分、シゲは見ることができた。
「ええ子やね」
 シゲは竜也の額にちゅっと音を立ててキスをする。
「・・っあっ、あっ、はぁ・・ぅ!」
 ずちゅずちゅと、激しく出し入れを繰り返す指に竜也は翻弄されながら、シゲの性器も熱く猛ってきていることに気付いた。
「シゲ・・っ」
 胸を大きく上下させながら、竜也はシゲに懇願する。
「ね・・っ、あっ・・はぁっんっ」
「何?」
 シゲは、竜也が何を言いたいのか分かっていながら、わざと指の数を減らしてやる。
「やぁっ・・ん!」
 竜也は耳に舌を入れられて、肩を震わせながら非難めいた声を上げる。
「や・・だ、ぁっ。ぬかな・・で・・ぇ」
「我侭な子やなぁ。どうして欲しいん」
「はぁっ・・ん!も・・と・・ぉ」
 シゲの指がやや乱暴に竜也の奥をえぐった。
「い・・あぁ・・っ」
 そして竜也が言葉を紡ぐ余裕も無くなる位、激しく中を掻き回す。
 中で鉤状に折り曲げられた指が、竜也の前立腺を擦る度に、竜也は腰を跳ねさせる。それに連動して、縛られた手首と足首に、きりり・・と紐が食い込んだが、今の竜也にとっては、その傷みすら快感に摩り替わってしまう。
「やっやっ・・ぁ。い・・たいぃ・・」
 引っかくように内壁を擦る指に、悲鳴に近い声尾を上げながら、それでも竜也のそこは、シゲの指をきつく締め上げて離そうとはしない。
「痛いほうが、感じるんやないの?たつぼんは」
 完全にからかい口調のシゲに、竜也の性器がびくんと反応する。痛みに反応してプクンと先走りを溢れさせる性器の様子を、手足を縛られている状態ではシゲに隠すこともできず、それが更に竜也を煽った。
「ほら、な?自分、マゾやろ」
 言って、シゲはまた竜也の中で三本の指を開くようにする。
「はぁぁっん・・!」
 無理やり広げられる感覚に、竜也は背骨が震えた。
 竜也には、どこかそんなところがある。
 普段はプライドが高いくせに、ことセックスとなると、言葉で侮辱めいたことを言われたり、快感をせき止めるような辛い刺激を与えられたりすると、余計感じるのだ。
 普段禁欲的な雰囲気をまとっているだけに、シゲにとってもそんな竜也の痴態は、十分楽しめるものだった。
「竜也、そろそろ欲しいんちゃう?」
「ひゃぁ・・っ!」
 勢い良く指を引き抜かれる一瞬の強い衝撃に、竜也の体がびくんと跳ねる。
「ふ・・は・・ぁ・・・」
「欲しいんちゃうの?ほら、もうぐちょぐちょやん」
 からかうように指を目の前に持ってくるシゲに、竜也は慌てて目を逸らす。それがまた、シゲを不機嫌にさせた。竜也の口を無理やり開かせ、そこに自分の指を含ませる。
「う・・ぅ、ふぅ!」
 喉奥に差し込まれる指に嘔吐間すら覚えながら、竜也はシゲの声から逃れられない。
「ちゃんと言えや、な?何度教えたら、できるん?」
 そしてシゲは、竜也の口から指を抜くと、その唾液まみれの指で秘孔に触れた。中途半端に放り出された竜也の秘孔はひくひくと収縮して、そこからは生クリームの甘ったるい匂いが立ち上ってくるようだった。
「もっと、奥・・・ぅ」
 竜也は口端から零れる唾液もそのままに、秘孔の周りを辿るシゲの指に、最奥がうずくのを感じずにはいられない。けれど竜也は縛られている腕のせいで自らそこを慰めるわけにもいかず、ただ足を大きく開いて腰を上げ、シゲに懇願するしかできない。
「おねが・・い、シ・・ゲ・・ぇ」
「舐めて欲しい?」
 竜也は素直に頷いた。シゲは真っ赤に染まる竜也の耳朶を一度軽く食んでから、身体を下にずらす。更に大きく足を広げさせると、まるでシゲの蹂躙を待ちわびるかのように竜也の秘孔はすっかり開ききっていた。
「ふ・・・あぁぁぁ・・・っ」
 シゲの舌がそこに触れた途端、竜也の口から鼻にかかった甘ったるい声が漏れる。シゲは頬に笑みを刻みながら、そこに舌を深く差し入れた。
「ああっんん・・・!」
 ぬめる舌の感触に、竜也が腰をくねらせる。シゲは、ケーキの甘味を追うようにして、ぴちゃぴちゃと音を立てながら、竜也の中を味わった。
「あっあっああぁ・・!し、げ・・ぇっ。・・と、奥も・・ぉ」
 全身から甘い匂いをさせて、竜也がねだる。シゲはそのまま竜也の入り口を丹念に舐めながら、竜也の戒めを解いてやる。
「・・跡になったな」
 シゲは床に落ちた竜也の腕を見て、呟いた。目の前にある、竜也の足首にも当然、紅いうっ血の跡が残る。
「・・つに・・・いい・・」
 秘孔から唇を離して、足首に舌を這わせてきたシゲの髪を、竜也は震える指で梳いた。
「明日も、長袖やね」
 意地悪く笑うシゲに、竜也は黙って首を振る。シゲは、おもむろに身体を起こした。そして、髪に触れていた竜也の腕を取る。
「何をどうして欲しいんか、言うて、やってみせて?」
「な・・っ」
 竜也の頬が一層赤く染まる。まだほんの少しの羞恥心は残っているらしかったが、シゲは別にそれは気にしなかった。むしろ理性が残っててくれたほうが楽しいというものだ。
「ほら、早く。俺、阿保やから、たつぼんがやってみせてくれんと、分からへんねん」
 竜也は、絶対嘘だと確信していたが、それを言ったら、シゲは本気でここで止めてしまいかねない。その位は平気でやる男だった。そしてその足で、誰か他の相手を探しにさえ、行ってしまえるような気がする。
 それを思った途端、竜也には他の選択肢など浮かんでこなくなる。
 ついに竜也はまだ少々痺れる手で、そっと自分の秘孔に触れた。
「ん・・っ」
 挫けそうになりながらも、もう片方でシゲのズボンの上から性器に触れる。
「・・・れを・・。ここ・・に、挿れ・・・て」
「これって?」
 しかしシゲはそれだけでは許してくれない。竜也は仕方なく、震える手でシゲのズボンのファスナーを下ろす。そして、完全に復活しているシゲのペニスを引き出した。
「これ・・」
「これ?で、どうするん?」
 シゲは性器を竜也に握らせたまま、身体を寄せた。耳まで真っ赤にしながらねだってくる竜也は、信じられないくらい可愛くて、シゲは思わず竜也の耳に噛み付いた。
 近付いたシゲの汗の匂いが、竜也の鼻をくすぐる。
「あ・・」
 ぞくぞくっと悪寒が走る。その瞬間に、竜也のタガは外れるどころか、粉砕した。
「シゲの、これ・・を、俺のここに・・っ、突っ込・・で・・!」
 竜也は両手でシゲの性器を擦り上げて、自らシゲに口付ける。
 そういえば、今日はじめてのまともなキスかもしれないと、頭のどこかで思った。
「ん・・」
 シゲは、竜也を突き放す事無く、きちんとキスに応えてくれた。歯列を割って侵入した舌が、竜也の上あごを舐める。意外にそこが感じることを教えてくれたのは、他でもないシゲだった。
「あ・・。し・・げぇっ、お願い・・からっ・・・、も、う・・犯して・・え」
 口付けの角度を変える合間に、竜也がかすれる声で叫んだ。
 ぞくっとシゲの下肢に熱が溜まる。竜也の手の中で、シゲの一物がさらに張り詰めた。
「あ・・っ、やくっ・・。挿れ・・て」
 身体を摺り寄せてくる竜也は、我慢できなくなったかように自らの指で自分の秘孔に指を差し入れた。散々弄くられていたそこは、まるで女の性器のようにぐちゅりと濡れた音を立てた。
 そこまでされると、さすがのシゲも限界になってくる。シゲはキスを繰り返しながら、竜也の秘孔から竜也の指を引き出す。
「ふ・・あっ」
 ひくりと痙攣させた竜也の喉に噛み付いて、シゲは竜也を床に押し倒す。後で竜也の腰に負担になるとか、すぐ横にベッドがあるのにとか、そんなことなど考える余裕も無く、シゲはそのまま竜也の両足を担ぎ上げると、一気に腰を推し進めた。
「あぁぁぁぁっ・・・」
 竜也の背中が弓なりに反る。挿れた瞬間に、竜也の内壁が痛いくらいに締め付けてきて、シゲも思わず呻く。
「っつ・・」
 それをほぐすように、シゲは乱暴に腰を動かす。
「あっぁっ・・・、やっ・・ま・・て・・!」
 痛いと悲鳴を上げる竜也にお構いなしに、シゲは抜き差しを続けた。
「ひゃ・・っあっ・・あ、ふ・・ぅ」
 竜也の声に、徐々に甘ったるいものが混じってくる。秘孔からもくちゅくちゅという、粘着質な音が漏れ始めた。竜也の性器も、とろとろと先走りで濡れてくる。それが竜也の秘孔にまで流れて、潤滑剤になり、余計にシゲのストロークを激しいものにした。
「あっあっ・・はあ・・っん!やっ、だめ・・っ。いやっ・・だ、ぁ」
「何が・・、嫌、や・・っ。っの、好きモン・・!」
 ぱんっと激しい音を立てて、シゲが竜也の奥をえぐる。
「ふぁ・・っ」
 竜也がきゅうっとシゲを締め上げて、その心地よさにシゲは眉根を寄せた。
「ほんっまに・・っ、すけべやな・・!お前っ」
「あっ・・・あっ・・・ふぁ・・っ。んん・・ぅ!」
 激しく攻め立てられるたびに、後頭部が床に擦れて痛い。背骨が床に当たって痛い。けれど、それ以上にシゲに暴かれる秘孔が、シゲの一物に限界まで開かれて、引きつるように痛い。
「あぁ・・っ。シ・・ゲェ・・!もっとぉ・・」
 なのに、口から零れるのは制止する言葉ではなく、求める台詞。
「ええんか?そんなに?これ、がっ?」
 シゲの額から、数滴の汗が落ちてくる。それにすら感じるのだから、不思議だ。
「いいっ・・・いっ・・。・・・っすぎ・・て、おかし・・・なりそ・・う!あっあん・・・っ」
 いつの間にか、竜也の両足はシゲの腰に絡まって、それを強く引き寄せていた。シゲの激しい動きに合わせて、竜也も腰を振る。
 床に投げ出されてきつく拳を作っていた手を、シゲが拾い上げて、肩に回させた。竜也はそれに逆らう事無く思い切りシゲの肩を抱きしめた。
「俺のもん・・やっ・・らな・・・!竜也・・っ」
 シゲがぐちゅぐちゅと抽送を繰り返すたびに、竜也の中からシゲの先走りが溢れてくる。それと竜也のものとが混ざり合って、床にぽたぽたと濃い染みを作った。
「あっは・・んっ!・・かって・・・る!シゲの・・もの・・・っ、だか・・ら!」
 汗で濡れる額に前髪を張り付かせながら、竜也が喘ぐ。
 こうやって、男のプライドだとか、常識だとかを全て忘れて、一個のモノに成り下がれることが、竜也には嬉しかった。そうやって、快感を追うだけの器になって、シゲに犯されてシゲを受け入れることができる。それが、竜也には嬉しかった。
 例えシゲにとって、自分が単なる抱き枕だとしても。
「こら」
 突然、シゲに呼ばれて、竜也は驚いて合っていなかった視線をシゲに向けた。
「また、余計なこと考えてたやろ。最中に・・俺から・・・目ぇ離すなて、言うて・・・やろ・・っ」
 シゲはほとんど真上から突き刺すようにして、竜也の奥をえぐる。その衝撃に、竜也は思わず後頭部を床に打ちつけたが、そんなことは互いに気にならなかった。
「・・・はっあんっ・・!ご・・っめ・・!」
 その体勢のまま何度もえぐられると、竜也はシゲのものが抜かれる度に、内臓ごと引きずり出されそうになる浮遊感と、地の底まで沈められるように落下するような快感に、恐怖心すら抱いて、シゲにしがみつく。
「はっ、はっ・・・・ぁあっん!んっ」
 頂点に上り詰める竜也を見下ろしながら、シゲはその喉に噛み付きたくなった。そうする代わりに、シゲは乳首に噛み付いた。
「くぁっ・・ん!」
 一層大きく跳ねる身体。言ってしまいたかった。どれだけ、自分が竜也に執着しているか。どれだけこの白い身体を喰らい尽くして、愛し尽くしてしまいたいと思っているか。
 だけど、言えなかった。竜也は、それを望んでいないから。もし言ってしまったら、プライドの高い竜也は、男同士の恋人で、自分が抱かれる側であることに耐えられなくなるだろう。だから、今はこれでいい。無理矢理、シゲが竜也の所有権を主張して、抱く。
 今は、それが一番二人に合った愛し方なのだ。
「シゲ・・シゲ・・ぇ!」
「竜也・・!裏切っ・・・ら、殺す・・でっ?」
 それだけは、真実。
「あっ・・はっ。いい・・よ!」
 そしてそれも、本心。
「し・・げっ、もっだめ・・・!」
 竜也が一番大きく背中を弓なりにそらせた瞬間、中もきつく締まって、シゲも限界を向かえた。
「く・・ぁ!」
 叩きつけられる精の感触が、心地良いと竜也は思った。
 狂ってる・・・。竜也が最後にそう呟いて、シゲは、せやね、と笑った。

 翌日、またしても長袖だった竜也に、将は何か声をかけようとしたが、首筋にうっすら残る紅い跡に、それを思いとどまった。
 紅い跡は二つ。絡められた指の跡。そしてその上に重なるキスの跡。
   















えーと・・・、やり過ぎですか?(苦笑。
ショ水が好きです。シゲ水前提希望で。(死。
これは友人の誕生日だったなぁ。リクエストが”20禁”。そう、彼女の20の誕生日だった・・・。
クリアできてたのかは分からないが、非常にショ水が楽しかった。