竜也はドラムバックを肩にかける。 解散がかかった後の帰宅方法は様々だが、京都と東京のシゲと竜也は、当然まるきり方向が違うので、迎えの無いメンバーに用意されているバスも当然違う。 竜也はバスのタラップに足を掛ける。 「たつぼん!」 突然、たった一人しか呼ばないあだ名で呼ばれ、勢い良く腕を引かれて、竜也はバランスを崩してタラップから足を滑らせる。 「・・わっ」 「っと」 それを上手く支えたのは、今竜也を滑らせた張本人のシゲ。 「何すんだ、お前は!」 驚いたせいで語気の荒くなる竜也に、並んでいた数人と既にバスに乗り込んでいた数人が、何事かと顔を覗かせる。 向けられる複数の視線など、シゲは全く意に介さず、口の両端を吊り上げて、実に楽しそうに笑った。そして、今度は軽く竜也の肩を引く。 触れる寸前、シゲは囁いた。 「充電♪」 「・・・・ふっ・・!?」 軽く口付けた後で、シゲは半開きなっている竜也の唇を舌先でぺろりと舐めて、付け足した。 「また電話するわ。たつぼんも、足りんくなったらしてこいや。ほたらな!!」 片手を上げて走り去るシゲの背中に、大人数の驚愕の叫び声と竜也の怒声が同時に浴びせられたが、シゲは振り向くことなく自分のバスに乗り込み、そして腹を抱えて暫く笑った。 一気にシリアスさが台無しですな。笑。 しかし私は、遠距離すら楽しんでそうな、こんなシゲが好きなのですがね。 |