『たっちゃん?お誕生日おめでとうv今年は帰って来られなくて寂しいわ。年末には帰ってこられそう?孝ちゃんたらね、この間何か買ってきてたのよ?百合ちゃんも。一泊でも良いから、顔見せに帰ってきてねv』 何年経っても変わらない優しい響を持つ母の声を携帯の留守電越しに聞きながら、竜也はホームに入ってくる電車を眺めた。 目の前に止まった電車の扉が開くのとほぼ同時に携帯を畳み、竜也は脇に置いておいた雑誌を手に取り立ち上がる。 (後でメールしておこう) 今年の誕生日は、関東の方にシゲが来てるから帰れない、と。 息子が中学からの友人と同じ夢を叶え、その交友が長く続いていることを単純に喜ばしく思ってくれているらしいあの母なら、きっと笑って許してくれるだろう。 会社帰りのサラリーマンたちの群れと共に電車に乗り込み、ネオンが輝きだした街を見下ろしながら、視界に入るスポーツ新聞の記事で、今日の試合でサンガが勝った事を知った。 竜也は、携帯をズボンの後ろポケットに突っ込み、先ほど買ったばかりの雑誌に折り目をつけたところを開いて、微かに笑う。 そこには、見開き一ページを斜めに切る様にして、センスの無い見出しが躍っている。 『サンガの藤村選手、熱愛中!?−足しげく通う女性の存在!−』 サンガの選手が宿泊しているホテルの自動扉をくぐると、フロントに立って笑みを浮かべる男性が、いらっしゃいませ、と迎えてくれる。 「サンガの選手って、帰って来てる?」 彼はフロントに置いてあるパソコンで何かしら操作をして、帰ってる方もおりますが、まだお出かけの方もいらっしゃいますね、とにこやかに答えてくれる。 「824の藤村は?」 先に聞き出しておいたシゲの部屋番号を告げると、フロントマンは間を置かずして、部屋にいらっしゃるようですと答えた。 「電話借りていい?」 フロントの端に備え付けてある電話を指して尋ねると、彼はわざわざ受話器を取って渡してくれた。 部屋番の上に2を付けてプッシュすると、程なくして少々掠れ気味のシゲの声がした。 『はい・・?』 「俺。今フロントなんだけど」 『・・・は?たつぼん・・・?』 シゲの間の抜けた声を最後まで聞かずに、竜也は受話器を置いた。そして真正面を見て立っているフロントマンに声をかける。 「すぐ下りてくるんだけど、部屋上がってあいつ呼んできてもいいかな?」 どうぞ、とフロントマンは手でエレベーターを示してくれた。 他に誰も居ないエレベーターで、階数を示す表示を見ながら、竜也は口元に笑みを刻む。 (男同士って、こういうのは楽なのかな) 例えば、ホテルによっては面会はロビーでというホテルもある。 シングルの部屋を一人で借りておいて、「ご商売」に使う人が居るかららしい。 けれど、それは当然尋ねてきた相手が家族の場合は例外で、部屋まで行くのが許されることも多いし、同伴者が同性の場合も、多くは黙認だ。 今だって、おそらくフロントマンが竜也のことを訝しく思ったことも無かっただろう。竜也が宿泊者と同性で、更にはテレビでも見たことがあるから。 自分の立場をこんな風に、プラスに考えられるようになるなんて、シゲに出会った頃の自分は想像もつかなかっただろう。 何時だって、男でありプロを目指すことがシゲとのことにマイナスにしかならない、と悩んでいたのだから。 (さて、と) ぽーん、と軽やかな音を立てて、竜也を八階に運んでくれたエレベーターが扉を開く。 そこには。 「よう、シゲ。おめでとう、今日のデイゲーム勝ったんだな」 取りあえず飛び出してきました状態のシゲが、そこに居た。 竜也はエレベーターを降りることは無く、そのままシゲと共にフロントにとって返した。そしてシゲと一緒にホテルを出る。 フロントマンはやはりにこやかに、いってらっしゃいませ。とだけ言った。 飲み屋やカラオケ屋が派手派手しいネオンを光らせ始めた街を並んで歩きながら、シゲは寝起きなのか乱れている髪を手櫛で整えながら、背広や制服の波を器用に縫って歩く。 「や〜、まじで驚いたわ〜〜。たつぼん、連絡無しなんやもん。今日の試合かて来られへん言うてたから、絶対今日会えるわけ無いて思ぅてたんに」 シゲを先導するかのように人の波をすり抜けて行きながら、竜也は振り返らずに歩く。 「駄目だったか?」 竜也に目指している場所があるらしいことを察し、それについては何の質問も挟まないまま、シゲは竜也を見失う事無く付いて行く。 「まさか。嬉しいけど」 竜也は特に迷うような素振りも見せずに歩いて行く。 周りの人たちは家路を急ぐ人が多いらしく、二人に気付いた様子を見せる人間はいなかった。 しかし竜也は、ふと人通りが途切れたところを見計らい、歩みを緩めてシゲに何か手渡してきた。 「何?こないな時間にサングラス掛けろて?」 竜也が渡してきたのは、薄く青い色が入ったサングラス。 シゲにそれを受け取らせると竜也は、自分はどこから取り出したのか、ニット帽を被る。 「たつぼん?そないにいかがわしいとこに行こうとしてんのん?」 少々からかいを含めてシゲが笑って聞くと、竜也からの答えは。 「うん、だから、余り名前呼ぶなよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」 まさか肯定の返事が返ってくるとは思わなかったシゲは、再び歩調を速めた竜也に一瞬後れを取った。 (いかがわしいかぁ?) シゲは、何となく所在無さ気にベッドに腰掛けながら、さっさと上着を脱いでハンガーに掛けている竜也をぼんやり眺めた。 「シゲ、上着」 「あ?あぁ・・」 シゲはやや慌て上着を脱ぐと、片手にハンガーをスタンバイしている竜也に上着を渡す。 竜也はそのままハンガーを壁に掛け、そして丁寧に上着の皺を伸ばすように袖の辺りを軽くぱんぱんと叩いてから、シゲに向き直った。 「何か食う?」 シゲは視界の水野が青みがかって見えたことで、まだサングラスをしていたことに気付き、それを外すとぎしっとベッドを揺らしながら枕元にそっと置いた。 「いや、いらへんわ。それよかたつぼん、ここのどこがいかがわしいねん。お前の部屋やんけ」 シゲがどこか不満そうに呟くと、竜也はくすくすと笑う。 竜也はあの後、つい十分前ほどに自分が出てきた駅に再び舞い戻り、先ほどとは逆行きの電車にシゲをつれて乗り、そして今自分が一人暮らしをしているワンルームの部屋にシゲを連れて来たのだ。 何て手間のかかる事をしたものだろうかとシゲは呆れたが、竜也にとってはさほど思うことは無いらしい。 「いや、言ってみただけだけどさ。それより、シゲ?食いモンいらねぇんなら、ちょっと聞きたいことがあんだけど?」 「何?」 シゲが首を傾げながら尋ねると、すっと目の前に見開き一ページの週刊誌のページが示された。 「ぅげ」 思わずシゲが呻いたその記事は、若い男がマンションのエントランスの方に背を向けて立ち、若い女がそれに飛びつくようにして居る写真。 おそらく二人がキスしているのだろうことが容易に窺える。 更には見出し。 『サンガの藤村選手、熱愛中!?−足しげく通う女性の存在!−』 シゲ自身、この記事をコンビにで見かけたときにはそのセンスの無い見出しに失笑したが、それを竜也に突きつけられたとなると、浮かぶのは引きつり笑いである。 「これ、誰?」 口元を僅かに震わせるシゲに、対して竜也はにっこりと問い掛けた。 「いや、知らへん・・」 「知らない?お前、知らない奴にいきなり襲われるほど、隙だらけだったんだ?」 まるで上機嫌そのものの表情をしている綺麗な竜也の笑顔を目前にしながらも、シゲは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。 「ほんまに知らない奴、で。いきなり部屋の前に居たんや。サインもろたら、大人しゅう帰る言うて・・」 何となく後ろめたさを感じながらもシゲが真実を告げると、竜也はもう用は無いとでも言う様に乱暴に雑誌を後ろ手に放り投げた。 バサッと落ちる雑誌の音を聞きながら、シゲはにこにこと笑う竜也の頬に手を伸ばす。 竜也はそれを振り払ったりなどはせずに、シゲの乾いた指先の感触にますます目を細めた。 「そらまぁ、油断したんは認めるけど。せやけど、この記事に書いてあるようなこと、一個も無いで?寧ろ俺は唇奪われた被害者やろ」 だから慰めて、と頬から首の後ろに手を移動させてくいっと軽く引くと、竜也はあっさりシゲの口付けを受け取った。 軽く合わせるだけの口付けを数秒して、角度を変えてまた軽く口付ける。 キスを繰り返すうちに達也の腕もシゲに伸びてきて、竜也はベッドに腰掛けるシゲを跨ぐ様にしてベッドに膝を乗せた。 片側に体重が集中したベッドが悲鳴を上げたが、二人がそれを気に留める様子は無い。 「・・・何や」 唇を離して、間近でシゲを覗き込む竜也に、シゲは口端を上げて笑いかける。目尻が少し上気し始めているのは、おそらくお互い様だろうと思いながら、竜也はシゲの瞳に映りこむ自分に深く笑いかけた。 「その女も甘いなって思って」 竜也の茶色い瞳に映りこむシゲが眉根を寄せた。竜也はその瞬間に上体をシゲの方に向けて倒す。 「ぉわっ」 シゲを押し倒すかのようにしてベッドに倒れこむと、竜也は素早くベッドの端に置いておいた物を指に絡ませる。 「何すんねん。あー、びっくりした・・」 言いながらも楽しげに笑うシゲに、同じように先ほどからすっかり上機嫌の竜也は、さらりと言い放った。 「俺なら、全部奪うのに」 「は?」 シゲの表情が、凍り付く。 竜也がシゲの両腕を掴み上げたからだ。シゲの頭脳が、されていることを完全に把握する前に、竜也は手早くそれをシゲの頭の上に持っていった。 「おい!?」 ようやく、おかしなことをされていると判断したらしいシゲが腕を振り払おうとする前に、竜也は今指に絡ませた物を手繰り寄せて、それでシゲの手首をまとめて縛り上げてしまった。 「竜也!!?おま、悪ふざけも大概にせぇよっ?」 愛用のスポーツタオルでシゲの腕を縛り上げた竜也は、そのままシゲの腹の上に跨って、蛍光灯を背にシゲを見下ろす。 「ふざけてねぇよ?あの記事の女見た時にさ、詰めが甘いなって思ったんだよな。いいじゃん、俺今日誕生日だしさ。10代最後の誕生日記念に、好きにやらせろよ。俺だったらキスだけじゃなくて、全部奪う」 そう言って、竜也はシゲから一度身体を離して、両足をベッドの上に乗せ上げた。 シゲはその隙を見て身体を起こそうとしたが、竜也はすぐに鳩尾辺りに片腕を乗せてきて、そのまま身体を下にずらしていく。 「ちょお。たつぼんっ。待てぇええぇぇぇえ!」 普段から自分は攻めの男だと豪語してきたシゲにとって、出会って六年は経とうというけれども、一度として自分がそちら側に回ることを行動に起こさなかった筈の竜也のこの行動には、心底焦らされた。 しかし竜也はそんなシゲの悲鳴などお構いなしに、ズボンのファスナーに手をかける。 「まじ、ちょ、待ってって!たつっ」 首だけかろうじて浮かせたシゲは、股間に手を伸ばす竜也を思わず蹴り上げそうになったが、目を細めて綺麗に笑いかけられて、出会ったときからその顔が気に入りのシゲは、まるでパブロフの犬のように足を引っ込ませないわけにはいかなかった。 「大丈夫だって。気持ち良くしてやるだけだよ。てめぇと違って、いじめて喜ぶ趣味は無い」 何気に失礼なことを言われたような気がしたが、次の瞬間にはまだ全く興奮を示していない自身を直に握りこまれ、続く快感を容易に想像できてシゲは僅かに息を詰めた。 「・・っ」 竜也はゆっくりとまだ萎えたソレを撫で上げる。 首を持ち上げる体勢に疲れたシゲは、ほのかに竜也の匂いのするシーツに頬を当てた。 「冷たくない?」 冷えた手の平で愛撫され、シゲは背筋が震えた。 「冷たいけど、気持ちええよ、ソレ・・」 「そう?」 竜也は嬉しそうな声を上げると、今度は何の躊躇いも無く先端部分に唇を落とした。 「うあ・・っ」 茎の部分を冷たい指が這い回り、先端部分は生暖かい口内に引き込まれて、同時に与えられる快感にシゲの腰あたりにずくん、とむず痒いような熱が集まってくる。 ぐりゅぐりゅと舌先で先端を突付けば、とろりとした先走りが溢れてくる。竜也はそれを迷う事無く嚥下しながら、浮き上がり始めた血管を指で擦り上げる。 「たつ・・っ」 上の方から落ちて来るシゲの声が、興奮で震えている。 ぞくっと、竜也の下肢にも悪寒にも似た快感が競り上がってくる。 その内、シゲの熱を分け与えられるように竜也の手の平の温度も上ってきて、その熱さにシゲは奥歯を噛み締めながら竜也の口内に己の熱を放った。 「・・う・・!」 竜也はシゲの放った精液を口に含むと、そのまま身を起こした。 「たつぼん?」 口元を手で押さえながら、竜也は膝立ちになり自身のベルトのバックルを外しにかかる。 片手で何とかベルトを緩めると、竜也はシゲの見ている目の前で、下着ごとそれを膝まで引き下ろした。 煌々と明かりの点く中で竜也の下肢が露になる。竜也の中心は、触れてもいないのに、シゲのものを愛撫していたというだけで軽く勃ち上がり、透明な蜜をその茎から滴らせていて、それが蛍光灯の白い光を反射していた。 「おい・・・」 余りの竜也の痴態に、再び硬度を取り戻すシゲ自身にはお構いなしに、竜也は口に含んでいたシゲの放ったものを手の平に吐き出すと、その手で自身の性器を握った。 「はあぁ・・っ」 濡れた溜息が竜也の口から零れる。 シゲの喉がごくりと大きく上下した。 「あっぁ・・っあ」 シゲの脚の間に膝立ちのまま、竜也は瞼を閉じて眉根を寄せて、頬を紅潮させて自身を擦り上げる。 竜也の先走りとシゲの精液とで、すぐにそこは濡れた淫猥な音を上げ始めた。 「ああぁ・・く!」 更に竜也は前から指を滑らせて、奥にあるいつもシゲを受け入れているところにも指を埋め込んだ。 くぷ、と軽い抵抗を残しただけで、竜也のソコはあっさりと竜也の細い指一本をやすやすと咥え込んだ。 「あっあ・・んっ。く・・は・・ぁっ」 片手で性器を擦り、もう片方で後ろを慣らしながら竜也は背を反らせて身悶える。 額に玉の汗が有浮かび、首まで桜色に染まるその光景は、シゲに自由にならない両腕を歯噛み押させるのに十分すぎた。 「あー、くそっ!これ解けや、ド阿保っ!!」 どうやら自分が受け入れるほうに回ることは無いらしいことを察し、僅かに安堵はしたものの、目の前でそんな光景を繰り広げられたら、もう一分だって理性は保たない。 眉を吊り上げて叫ぶシゲに、竜也は興奮に濡れた瞳を薄く開けて、熱に熟れた舌を出してシゲを見下ろして笑った。 「やだよ・・っ、お前になんかっ・・、何、一つ・・・ヤらせてやんない」 そう言って竜也は一旦、余りにも見る者に対して刺激の強い自慰行為を止めて、膝にわだかまっていたズボンも、まだ一切乱れていなかった上着も脱ぎ捨てた。 そして、シゲのシャツのボタンに手をかける。 シゲは眉をしかめて竜也を睨みつけ、ボタンを全て外された頃に、わざと竜也の臀部に当たるようにして腰を突き出してみせた。 「・・ひぅっ」 突然双丘に猛ったモノを感じて、竜也は甲高い声を上げる。そしてすぐにシゲが何をしたのか理解し、曝け出させた胸元にキスをした。 「凄い、元気だなー」 引き締まった胸にうっとり舌を這わせる竜也に、シゲは忌々しげに吐き捨てた。 「目の前で、んなモン晒されたら当たり前や、ボケ!本気で、そろそろ挿れさせろやっ。たつや、マジでこれ解け。ほたら、お前の乳首も弄ってやれんで?」 シゲのその言葉に、竜也は思わず自分の唇を湿らせた。 シゲに散々開発されたそこは、既に赤く立ち上がっていて、いつもの愛撫を今や遅しと待っていたのだが、それでも竜也は首を縦に振らなかった。 「シゲ、今日は俺の好きにさせろよ、絶対」 もう身体はすっかり快感を貪り始めているし、自分で慣らした竜也の中も、強い刺激を求めているだろうにそんなこを言ってくるのは、やはりそうとう竜也は怒っているらしいとシゲは考えて。 「シゲ?今後事有る毎にねちねち言われ続けるのと、今ここで、俺の好きにさせるのと、どっちか選べ?」 プラスそんな極上に欲情した笑顔で言われた日には、首は縦にしか揺れないだろう。 「・・・・も、好きにしてクダサイ」 「大好きだぜ、シゲv」 言うなり、竜也は身体を起こしてシゲのズボンも引き抜いた。 そして再び腹を跨いでくる竜也。 「ん・・っ」 そして少々苦しげに眉根を寄せると、シゲのそそり立ったモノを片手で支えて、ゆっくりとその上に身体を沈めていく。 「・・んっく・・ぅ」 「ぅ・・」 受動的に竜也を押し開いていくのは、何だか変な感じがした。いつも以上に、竜也に”受け入れられている”ことを実感する。 「は・・ぁ」 全てを収めきった竜也は一度大きな息を吐き出して、すぐに自らの身体を浮かせる。 ずず・・とゆっくりと竜也の内壁に擦られる感触に、シゲは物足りなさに思わず腰を突き上げる。 「あぁ・・っん。ちょ、待てって・・。すぐ、動く、から・・」 「やって、足りへんのやもん」 シゲが正直に言うと、竜也は少し照れたように笑った。 何度か緩い抜き差しを繰り返していくうちに、徐々に竜也の腰の揺れが早まってくる。 「あっぁう・・っあ・・!はぁ・・っんっ、あっあっ、あっ・・」 みしみしとベッドが鳴き声を上げるが、シゲの耳には自分の上で啼く竜也の声しか耳に入らない。 竜也の中はぐにゅ、ぐにゅりと律動しながらシゲを締め上げて、そして緩める。 「・・っく、ぁ・・」 眉根を寄せて快感に耐えながらも、シゲは必死で瞳だけは閉じまいとした。 普段は絶対に電気を消せと喚く竜也が、蛍光灯の明かりの下で自らシゲを咥え込んで、恍惚とした表情で腰を揺らすなんて、今後何時お目にかかれるか分かったものではない。 「ああ・・・っっ」 一際強く竜也がシゲを締め付けた瞬間に、竜也の腹に白濁した液が飛び散った。 未だ怒張したままのシゲを内部に残したまま、竜也はシゲの腹に両腕を付いて荒い息を整える。 「おい、まさか、ここで止めるなんて言わへんやろな?」 竜也は、涙に潤んだ瞳でシゲを見る。そして、目元を真っ赤に染めていたずらっぽく微笑んだ。 「どうしようか?俺、終わったし?」 そして、腰を浮かせるような仕草を見せた竜也に、シゲは強く腰を突き上げてやる。 「はあぁ・・っん」 硬度を保ったままのシゲに、達したばかりで余計敏感になっている内壁を擦り上げられて、竜也の口からは鼻にかかった甘い声が零れる。 「俺の、中に欲しいんやないの?」 その声音は、竜也が聞きなれた皮肉気で楽しそうな響きを持っていた。 もう一度突き上げてやると、竜也は短く嬌声を上げた後で軽くシゲを睨んできた。 「へぇ、余裕戻ってきた?」 「適応能力には自信あんねん」 額に相変わらず脱色し続けている金の髪を張り付かせながら、にやりとシゲは笑う。 竜也は、筋の浮き出るシゲの腹部を一撫ですると、シゲの肩を取るようにして覆い被さってくる。 「ちょ、身体起こせ」 竜也の中からシゲを一旦引き抜いて、シゲは身体を起こす。 「腕、そのまま首に通せよ」 向き合うようにして座りながら、竜也はシゲに抱き付かれるような格好になる。 「これでええ?」 「ん・・」 竜也は軽くシゲに口付けると、再びシゲを受け入れるために腰を落とす。 「んん・・・」 そして再び竜也自身が腰を揺らし始めたが、今度はシゲ自身も下から竜也を突き上げてやる。 「あっぁうっん・・、はっ・・ぁ」 自分で好きなリズムで快感を貪った先程とは違って、予想外のところで感じるポイントを攻められて、竜也はシゲの背中に両腕でしがみついて、肩口に額をこすりつけた。 「ああぁ・・・、あっ。ひ・・っ」 シゲも、捕らえられたままの腕でできる限り竜也を抱きしめる。 「ええ・・っ?」 さらさらと揺れる髪の一房を口で咥えて軽く引っ張ってやると、首筋へ連動するその刺激に竜也の背筋がふるりと奮える。 「いい・・っ、も、また・・っ」 絶頂への波が押し寄せてきたことを訴えると、シゲも、俺もと答えた。 「腕使えへんて、不便・・ったつぼんの腰掴んで、がくがく言わせたいんやけど・・っ」 「・・っふぅう・・っん。あ、今度に、しろ・・っ。あ、もぅっ」 シゲの方にぴりっと痛みが走る。竜也が噛み付いたのだろう、けれどすぐにそこからじんじんとした快感が広がってくる。 「くる・・っ、あ、も、あかんっ、わ・・」 どくん、とシゲのそれ自身が震えたような気がして、竜也の最奥に暖かいものが叩きつけられる。 「ふああぁぁぁ・・っ」 二度三度と、全て竜也の中に注ぎ込もうと突き上げてくる衝撃に、竜也も欲望を開放した。 シゲは翌日始発で戻ることを余儀なくされた。 けれど特に不機嫌という訳でもなく、ようやく熱の冷めてきた自分の身体と竜也の身体を密着させるように抱きしめて、額にキスを落としながら軽く尋ねた。 「ご機嫌は良ぅなりましたん?」 柔らかいシゲの唇に、竜也は猫なら喉を鳴らしそうなほど目を細める。 「別に、最初から悪くないぜ?あの記事を持ち出したのは、使えると思ったからだよ」 竜也は手の届くところに放り投げてあった、シゲの腕を戒めたスポーツタオルを手に取って、少々赤くなったシゲの手首を撫でて笑った。 「やってみたかっただけ」 「っな・・・?」 その言葉にシゲは固まったが、竜也はただご機嫌だった。 「楽しかったよ、さんきゅ。最高の誕生日だった」 口を半開きにして言葉を失うシゲに、竜也はちゅ、と口付ける。そしてベッドからするりと抜け出した。 裸身を惜しげもなく晒しながら、バスルームへ向かう竜也をやや呆然と見送るシゲに、竜也は鮮やかに笑うのだった。 「お前と付き合ってから、俺もイイ性格になったよな?」 自分がこんなことをしたいと思ったのはシゲのせいだとでも言いそうな口ぶりに、シゲは頬を引きつらせながらがばっと身体を起こす。 「おまえなぁ・・っ」 シゲが何か言う前に、竜也はひらりと身を翻した。 「文句があんなら、言ってみな?」 数十秒後、部屋にはただ竜也の使うシャワーの音が響いた。 どこまでも男前な竜也を目指したところ、副産物としてどこまでもへたれなシゲが出来上がりましたって感じでしょうか?笑。 二条様とメールをしていた際、「酔った勢いとかではなく、こう、本気で!襲う水野が好きだ」と仰っておりましたので、頑張ってみましたが・・・。いかがなものでしょう??? 私は、本当にサッカーに関する知識が乏しいです。この時期にデイゲームとはあるものなのか、試合後の選手たちは自由なのか、諸々分かりませんので、全ては私の都合のいいように捏造。爆。 そんな感じに嘘八百な上、遅くなりまして大変申し訳ありませんが、よろしければ二条様vお納めくださいませ。 |