6 やきもち 「大人気ない」 竜也を虐待から救ってくれた渋沢と、一時期とはいえ預かってくれていた三上に請われ、シゲは竜也を連れて休診日の渋沢医院を訪れた。 「久しぶりだね、竜也。顔色もいいし、安心した」 にっこりと穏かに笑う渋沢に、竜也もぎこちなくだが笑みを返した。 「ちょい太ったんじゃね?シゲの飯、美味いか?」 その三上の言葉には、はにかんだ様に笑って頷いた。 そして猫は猫同士ということで渋沢医院の庭で、誠二と竹巳が竜也を伴ってじゃれ始めた。 庭に下りる縁側に通じるリビングで出されたコーラを飲みながら、シゲは適当に竜也の最近の様子を話す。 この間初めて共にスーパーに行ったら、以前に行ったコンビの広さも人の数の多さも比べものにならなくて、暫く竜也はシゲの足にしがみ付いたままで歩くのに難儀したという話をした辺りから、渋沢も三上も親ばか精神が刺激されたのか、自分たちの猫の話も広げだし、結局その場は端から見れば猫自慢の場と化した。 「竜也、凄い髪ふわふわだー」 やに下がった顔をしながら誠二の自慢をしていた渋沢の声にはしゃぐ誠二の声が被って、シゲが庭を振り返ると誠二が竜也の髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜていた。 「ほんとだー、シャンプー好きなの?」 竹巳も誠二に釣られる様にして竜也の耳を撫でている。 竜也は前髪が目に入らないように目を眇めながら頷いた。 竜也は猫にしては珍しくお風呂場でシゲに洗ってもらうのが好きだった。シャワーだけでなく時には湯船にも浸かって、その気持ちよさに寝そうになったことも何度かある。 「えー、俺いっつも逃げるぜー」 だって気持ち悪いんだよ毛が濡れるのーと笑いながら、尚も竜也の髪を触りまくる誠二に、元々シゲ以外とのスキンシップに慣れていない竜也はどうしたら良いのか困惑気味で瞳を瞬かせている。 それを見たシゲはおもむろに腰を上げて、開け放ってある窓際に立った。 「たーつや、俺にも構って?」 そして縁側に出てしゃがみこみ、膝に置いた両腕に顎を埋めるようにして微笑んだ。 それを見た竜也は嬉しそうに笑って誠二と竹巳から離れると、乱れた髪をそのままに縁側に上ってシゲの膝に抱きついた。 「ん」 シゲが膝を崩して胡坐をかいてそこを示すように指すと、竜也はその上にちょこんと乗って、前髪を整えてくれるシゲの指に嬉しそうに咽を鳴らした。 それを背後から見ていた三上と渋沢は、シゲが立ち上がった時こそ何事かと訝しげに眉を顰めたが、竜也がシゲの膝に座った時点で、三上はやってられないという様に嘆息し、渋沢でさえ僅かに苦笑した。 「竜也が竹巳たちに構われてんのが、気に食わなかったってか?あほか」 「まぁ、うまくいってるみたいで良かったじゃないか」 自覚のある飼い主ばか二人にそれぞれ複雑な心境を抱かせながら、シゲは上機嫌で竜也の髪や耳を撫でていた。 庭では誠二と竹巳が暫し羨ましそうに二人を見上げ、その後すぐにリビングに上がってそれぞれの飼い主の側に駆け寄ってきた。 飼い主馬鹿三人衆(笑。 次辺りからシリアス入ればいいなぁとか・・(このシリーズでか。 ..2004年9月30日(木) |