軍隊パラレル2(マサツバ)
ガチャリ、室内に入ってきた人物に一斉に視線が集中した。
「黒川少尉!!」
「おー」
片手を上げながら同僚に応える黒川の姿は、至る所包帯やガーゼだらけだ。
「心配してたんだぜー、テロの爆破に巻き込まれたっつうから」
無事で何より、と背中をバシバシ叩いてくる同僚に苦笑で返し、
「でも椎名大佐に傷一つ負わせないなんて、さすがですよね!」
目を輝かせてくる後輩にまあなとおざなりに答え、黒川はまっすぐ一番奥の窓際にある上司の机に進んだ。
「黒川柾輝少尉、ただいま戻りました。テロリストの調書及び報告書はまた追って提出されるとのことです」
「ああ」
椎名はゆったりと椅子に腰掛けていた身体を起こし、おもむろに立ち上がる。そして隣接している椎名個人の執務室を指した。
「少々聞きたいことがある、来い」
その言葉を聞いた同僚たちは、険を含んだ椎名の声音に首を傾げる。上司を庇い名誉の負傷をした同僚に部下に対し、椎名は何をそんなに不機嫌なのだろうか。
しかし黒川は何も言わず、無言で椎名の後に付いて執務室に入る。
ドンッ。
入るなり、椎名の拳が打撲した黒川の胸に叩き付けられた。
「ゲホッ」
黒川は鈍い痛みに小さくむせたが、上司はお構いなくその胸に額を埋めて低く唸った。
「愛してないな?」
「Yes,sir」
黒川は迷う事無く答える。
「好きでもないな?」
「Yes,sir」
「側に居るな?」
「Yes,sir」
「俺のために死んだりしないな?」
「Yes・・・あんたのために生きるだけです」
答えて、胸に広がる柔らかな髪にそっと触れると、椎名の指がぎゅっと黒川の軍服の袖を掴んだ。
「それでいい、忘れるな」
胸に広がる誰よりも大切なその体温に、黒川は包帯の巻かれた指でそっと触れた。
何でマサツバなんだよ!(苦笑)
でも軍隊物は、やはりマサツバが真骨頂かと・・・。
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(初出2004.07.29/再録2004.10.05)