(ヒ)魔王銀時と、流され勇者新八「2」


「そして一年後、遂に町中の期待を背負って生まれた勇者の三軒隣の町長の嫁かず後家と呼ばれた妹で町の外れに独りで住んでいた独身42歳の産婆さんの手で、未熟児ギリギリで誰にも注目されることなく取上げられたのがあなたよ、新ちゃん!!!」
「・・・・・・・え、それって僕、勇者関係ないんじゃ・・・?」
「全く関係ないわね」
「だったら僕が今剣を持たされてる意味は!?ていうか、そんな生い立ち知りたくなかったですよ、切ないな!」
「その余りに地味な誕生に父上と母上も胸を痛めて、だから私たちはこの町に来たのよ・・。あなたがあんな生まれ方をした町を忘れて、あなたの地味さを誰も知らない土地で新しく生きて行こうって・・・」
「ちょっと待って!何か美談だけどおかしくね!?何で僕、生まれるだけで同情されてんの!?」
「けれど、あぁ・・!!そんな希望を抱いてこの町に来て三年、まず母上が慣れない土地の空気に馴染めずに病に倒れたわ・・!!」
「何か僕のせいみたいに聞こえるんですけど!?ていうか、ねぇ、姉上!僕が現在剣を持たされてる意味は!?ちょっと!?」
「そして幼い子供二人を抱えて、途方に暮れながらも立派にお人好しに過ごし、他人に田畑を奪われるという愚行を果たした父上も、数年前に他界・・」
「愚行って!いや確かに僕らが小作人に甘んじているのも、父上が田畑を取られたせいだけど・・って、この話どこまで続くの!?」
「その頃から魔王の暴挙は目に余るようになったわ・・・供物を要求し、応えなければ干ばつ、洪水、隣の親父の雷などなど・・」
「いや、最後のって魔王?」
「けれどあなたと同じ年に生まれたはずの勇者は、何もしてくれないわ!どこかで誰かが旅立ったという話も聞かない!だったらこの際、新ちゃんでも良いじゃない!寧ろ地味すぎて魔王だって気付かず、きっとすんなり城まで上げてくれるわ!」
「ちょっと待てエエェエエ!」
「そして新ちゃん、見事気付かれずに城に侵入した暁には、その地味さで見事魔王の寝首を欠いて来るのよ!!」
「どこからツッこめば良いんですか、僕!!」


・・・・続く(これ、銀新じゃない)



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