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シゲ吸血鬼パラレル。1.5


己の中に、僅かに残された吸血鬼のサガを呪ったことは殆ど無い。
日光の下に出ることは苦しかったが、死ぬわけではないし、自分には夜の世界が残されていた。
筋力も体力もただの人間のそれとはかけ離れて強く、そのことには感謝さえした。そのお陰で今の仕事にありつけたようなものだ。
血液も、特に日常的に必要なわけではない。あれば嬉しいし体調も良いが、 何も生き血で無くても良いし、人間のでなくても構わない。
自分にとっての血液とは、ただの人間にとっての嗜好品と同じ様な割合しか占めていない。
日常は。
ふいに、何の予告も無く訪れるその機。それを俺は心から呪う。
自分の中で、鬼と呼ばれる所以が目覚める時。
欲しいのは生き血であり、人間のもの。価値の高さはその持主が自分にとってどれだけ愛しいかで決まるという、鬼ゆえの業。
傷つけたくなど無いのに、鬼である自分には傷付け無い自信は全く持てない。
それどころか、追い、狩り、引き倒し、相手の血液を完全に己の一部に組み込みたいとさえ思う。
駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ。
こんな同居など、早く止めなければならない。俺の中の鬼が、彼の匂いを覚えてしまう前に。
水野竜也。
彼の体温がこの身に馴染んでしまう前に。


(日記再録)



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