吸血鬼シゲパラレル3 「決戦前夜」 シゲが飛び出していった際に割れたガラスの破片が散らばる室内で、竜也は手元からふと視線を上げ戸口に立つ藤代に一瞥を与えた。 藤代は無言で竜也に銃を差し出す。それは対モンスター用の麻酔銃。 しかし竜也はそれを受け取ろうとはせずに視線を手元に戻し、シリンダーにゆっくりと弾を込めた。 「いらねぇよ」 藤代は竜也の手元の弾を認め、瞠目した。 「銀弾じゃねぇか!水野、佐藤は仲間だぞ!?」 多くのモンスターは、銀を嫌う。昔は吸血鬼退治には銀の杭を使ったが、現代では杭よりも殺傷力の高い銃に銀弾を込めて使うことが多い。 ただし、それはあくまでも最終手段に使うべきものだ。 「今あいつを眠らせたところで、吸血鬼の本能は消えないんだろ?だったら、いつ大量の犠牲者を出すか分からねぇ奴を一時的に凌いでも無駄だ」 竜也は昨夜シゲに付けられた首筋の傷を隠そうともせずに、固まった血をそこに付着させたままシリンダー全てに銀弾を込め、フレームに収める。 そして振り返った竜也に、藤代は道を塞ぐように対峙する。 「佐藤が狙ってるのは、お前だぞ。吸血鬼は、好きな相手こそ捕食したがる。みすみす餌になりに行く気かよ?」 厳しい眼光を湛えて睨みつけてくる相棒に、竜也は唇を歪めて応えた。 「そりゃ好都合だ。探す手間も省けるだろ」 パキン、と竜也の足の下でガラスの破片が砕ける。 「死なねぇよ」 銃を持った手で藤代の肩を軽く叩くと、藤代は深く嘆息して道を開けた。 「死なせるなよ」 背中にそう告げてきた藤代に、竜也は片手を挙げて応えた。 「善処するよ」 雲間から、月が顔を覗かせ始めていた 拍手で連載しても、出る順番はバラバラなので見苦しいんですが、ご了承ください。 ちゃんと再録では並べますから!! (初出2004,9,23/再録2004,9,28) |