3 なんで僕なんだろう

 利央が仏頂面で朝練に参加していると、主将の和己が頭を撫でてくれた。
「明日には帰ってくるんだから、そんなに寂しそうにすんな」
 和己には何も言っていないのだが、普段からの利央の準太への懐きようを見ている彼は利央が不機嫌である理由を苦も無く当ててみせた。勿論、それは野球部員全員が簡単に正解できる程度の問題である。
「ん、和サンありがと」
 しかしわざわざ声をかけてくれたのは、和己だけだ。主将だからという理由もあるのだろうけど、それでもやっぱり和サンは優しいなぁと利央は胸が温かくなる。
 野球部員はきっと全員、和己の事を尊敬し慕っている。あの準太などその筆頭で、何を置いても部活優先と言うより和己優先だ。中等部の頃からそれを見てきた利央としては、彼はもしかしなくても和己のことが好きで堪らないのだなと思ってきた。
(それがいきなり押し倒された時には、何が何だか分かんなかったもんなぁ)
 今だって、彼の一番の優先事項は和己だ。しかし彼は和己ではなく、利央に口付けて触れて利央を組み敷く。
(なんでオレなんだろ)
 彼が側にいれば、準太もそれなりに利央のことを想ってくれているのかなと感じられる瞬間があるけれど、こうして離れてしまうと無理だ。彼が和己の事を慕っている光景ばかり思い出されて、彼の中での自分の位置というものに自信がなくなってくる。
 早く帰ってきて、そんな疑問を抱く暇もないほど触れて欲しいと、利央は大きく嘆息した。


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利央は相変わらず、準太からの愛情に疑いを持ってますね(爆笑。