4 君が足りない 利央はメールをマメにしてくる。朝から晩まで、それこそ「おはよう」「おやすみ」という準太にとっては返信の必要性を感じさせないようなメールを山ほど送ってくる。 しかし、宿泊学習中は携帯電話は使用禁止だ。電話ならば宿泊施設内の公衆電話でしても良いことになっているが、準太は自分からわざわざ利央にかけてやる気は毛頭無い。いつも連絡を取ってくるのは利央の方からで、準太からは用事のある時にしかしない。それを崩すような真似はしたくなかった。 それでも、いつもの日常が崩される事への違和感は拭えない。準太は昼食の時間こっそりと自分に宛がわれている部屋に戻り、荷物の中から携帯を引っ張り出して受信メールを確認してみたが、利央からのメールは見当たらなかった。 (わざわざ教師の目を盗んでこのオレがここまでしてやっているのに、何であの馬鹿はメール一つ寄越しやがらねぇんだ) 準太はまるで期待していたような自分が恥かしくなり、舌打をしながら乱暴に携帯を畳み荷物の奥深くへしまいこむ。 和己からの”調子はどうだ?投げ方忘れるなよ(笑)”というメールも、準太の気持ちをほんの少し浮上させただけですっきりとはさせてくれなかった。 いつもならば速攻で返信を打つ和己のメールにもその気が起きないくらい、準太は物足りなさを感じていた。 利央が和己を越える瞬間なんて、無いと思うのだが(酷い。 |