8 なんで君なんだろう 息もできない、なんて大袈裟なと準太は確かに呆れた。けれどその一方で、その言葉に準太の呼吸まで苦しくなるように、胸の奥が締めつけられたようになったのも事実。 準太は和己に憧れている。あの包容力、判断力、決断力、どれを取っても素晴らしい捕手で主将だ。その後継とも言って良い利央は、逆にまだまだガキ臭いし判断力も甘いし決断力も足りない。 和巳に惚れているのでは無いかと、自分を疑ったこともある。それくらい、彼の為に彼と少しでも長く野球をしていられるようにと、熱望していた。 けれど、こうして現実に準太を揺さぶるのはガキで頼りなくてまだまだ未熟な、利央だ。 いつも真っ直ぐに、ただ準太だけを見つめて、準サンと呼ぶ利央だ。 (何でお前だったんだろう) 憧れて、焦がれて、慕う和己ではなく、準太が手を伸ばして捕らえたのは利央だった。 「利央、オレは二日間野球してねぇ」 そして伸ばした手はしっかりと受け止められ、利央は準太の指に自分のそれを絡めて求める。準サン、と。寂しい、と。 『うん?うん、そうだろう、ねぇ・・?』 困惑したような声が返ってきて、準太は苛ついた。 野球を二日もしていないことを今更ながら実感して、利央の声を二日間も聞いていなかったことを今更ながら、実感した。 「だから、体力有り余ってっからな」 この二日間で少しは身体を動かしたりもしたけれど、普段野球部でしごかれている準太からすればそれは余裕の残るものだった。 『まぁ、そうだろうねぇ。て、何の話?準サン?』 自分の言葉を流されたのかと不服そうに低くなった利央の声に、準太は思わず喉の奥で笑った。 「だから、明日は覚悟しとけよ」 利央には部活があるだろうけれど、そんなことは知ったことではない、寂しいと言ったのは彼だ。 『え?え?・・て、準サン!?』 さすがに何を言われたのか察したらしい利央が、素っ頓狂な声を上げる。 「じゃあ、明日な。夜空けとけよ」 我慢させた分充分可愛がってやろうと付け足して、準太は通話を切った。 拍手で裏は書きませんよ!(笑。 |