シゲは水野の湿った髪に指を差し入れて、指に絡み付いてくる感触を楽しむ。 水野は暫くは目を細めて笑っていたが、シゲの指が徐々に首筋まで降りてきて、シゲの顔が至近距離まで近づいてきたのに気付き、慌てて身を反らした。 「・・・・・何でやねん・・」 不服そうに眉をひそめるシゲに、水野は頬を引きつらせながらじりじりと身を後退させる。自然にシゲの指が髪から外れていったが、シゲはそれを追う様にして腕を伸ばしてくる。 「いや、その、さ、シゲ。俺もう今日疲れたし、もう寝たいかなーとか・・・」 水野が無理矢理笑みを浮かべれば、シゲもまたにっこりと笑う。 「俺も寝たい」 その鮮やかな笑みに、さすが表情を作ることに慣れてる・・・なんてどうでも良いことに感心してしまうが、今はそんな場合ではない。 「だろ?だったら、ちょっと、離れないか?」 「なして?」 シゲがしようとしていることは分かる。嫌でも分かる。首筋に触れる指の温度で。 でも。 「だって、くっついて寝るには、暑いし・・・」 「くっつかへんと、寝られへんやん」 互いが互いの言葉意味を分かっていながら、気付かぬ振りをしてにっこりと笑い合う。 蛍光灯から逆光になりながらも、瞳の光は強いままのシゲにじりじりと追い詰められて、水野は壁に背中をぶつける。 「・・って・・」 ほんの少し眉をしかめた水野に、シゲは風呂場で見た水野の背中を思い出す。 途端にシゲは水野の首筋から指を話して、腹這いになるような体勢になって水野の下から水野の顔を覗き込む。 「もしかして、まだ痛いん?辛い?」 本当に心から心配している様な瞳に、水野は小さく頭を振る。傷はまだ赤かったり残っていたりするけれど、痛むほどではない。 「も、別に、傷は平気・・・。でも」 いつの間にか両足の間に身体を入れられていた。そしてシゲはじっと水野を見つめて、そして微笑した。 「怖い・・・?」 からかうでもなく、少し残念そうに笑うシゲに、水野は素直に頷いた。 怖くない、などという強がりは言えなかった。 例えあの時のシゲの行為が悪意からではなく、彼も持て余していた感情からのことであったのだとしても、水野は確かに傷を負ったし、恐怖を感じた。 それはもう水野の記憶に刻まれてしまった経験で、これから今シゲが自分を傷つけることを目的としていないと、頭で納得はしていても身体は敏感にあの時の恐怖と痛みをなぞって、それを回避したがる。 「そらそうなんやけど・・。俺が悪いんやし、自業自得なんやけどな・・・・・」 何の断りも無いどころか、言葉すらろくに無く同性に抱かれた恐怖は、如何程のものであったのかシゲには想像もつかないけれど、微かに震える水野の首筋にその恐怖を感じて、シゲは殊更優しくその腰に両腕を絡めた。 「・・・っ」 くすぐったさのような感覚に、水野は首をすくめる。 シゲは下から覗き込んでいた瞳を細めて、ただ固まる水野の腹部に、布越しに唇を落とす。 そして徐々に身体を起こして、完全に水野に向かい合うようにして座る。 両腕は腰に回されたままで包み込むように、しかし逃げを許さない強さで抱きしめられて、水野はもう無い後ろに尚逃げを打った。 「あんなぁ、たつぼん・・。そこまで逃げんといて・・。傷つくやんかぁ」 「誰のせいだよ・・」 責任転嫁してんじゃねぇよ。 口調だけは強気な水野にもう一度軽く口付けて、シゲは片目をつぶってみせる。 「大丈夫。俺のせいやっていう自覚はあるから。やから、な?ちゃあんと最後まで俺が責任取ったる♪」 言って、シゲは水野の背筋をつーっとなぞった。 「うっわ・・!」 くすぐったさに身を捩って笑う水野に、シゲは更に片手で水野のシャツの裾から手を差し入れた。 「おい、シゲ・・・!」 焦る水野に、シゲは満面の笑みで頬に口付ける。 「あんなんが俺のセックスやなんて思われたら、嫌やもん」 「な・・・・っん!」 瞬時に耳まで赤くなった水野の頬に、もう一度わざと音を立てて口付けると、シゲはそのまま頬に鼻に瞼にキスを落としながら、その片手は壁から水野の背を庇うように水野を抱きしめ、もう片方で水野の脇腹を撫で上げる。 「ふぁ・・っ」 「くすぐったい?」 耳朶にもキスをしながらシゲはそのまま水野のシャツをめくり上げてしまう。 「え、ちょ、シゲ・・・」 顔中に降らされるキスは触れるだけの優しいもので、背中を撫でてくれる手も暖かい。シゲが、自分を殊更大事に扱おうとしてくれていることは嫌でも分かったが、それでも、直に肌に触れられると身がすくんだ。 「たつぼん、好きや。今日はほんまにそれだけやから」 一旦水野のシャツから手を引き抜いて、シゲは身体を水野の脚の間に沈めていく。 「今日は・・・・?」 その微妙な言い回しに水野が眉をひそめると、シゲはまた両手で水野の腰をぎゅっと抱きしめた。 「聞き逃して」 「おい・・」 聞き逃せない水野がシゲの髪を引っ張る。シゲは小さく笑いながら、 「痛いわ」 と抗議して、水野のズボンの上から、いまだ何の反応も示していない水野の性器に唇を当てた。 「・・・シゲっ」 「ん?」 シゲは一度水野を見上げて、首を傾げて笑った。けれど、水野が口を開くより先にまたそこに顔を埋めてしまう。 「ちょ・・・」 そしてシゲの弾力のある舌が、水野のズボンのファスナーの上を行ったり来たりし始める。 「・・っ、っ・・う」 押し付けられるようにされながら舐め上げられて、水野は性器に布地が擦れるのを感じて、その痛いようなむず痒いような感触に思わず太股に力を入れてシゲの頭を押さえつけてしまう。 ざらざらとした布にシゲの唾液は吸収されていって、水野の股間の部分だけがまるで自然に濡れたように色を変え始める頃には、視覚的にも水野の興奮が分かるようになっていた。 「あ・・っ、あ、シ・・ゲ・・・っ、いた・・っ」 硬度を持ち始めた水野の性器に、シゲがあくまでも布越しではあるが歯を立てた。 ファスナーの付いている硬い部分が、特に強く水野の性器を刺激する。 シゲが水野の内股を撫で上げれば、そこは微かに震えていた。 「気持ちええやろ?」 シゲは一度口を離して、そこを手の平で擦り上げながら水野に尋ねる。 「ぁ・・っふ・・うっ。や・・ぁっ」 もみ上げられるようにされて、水野は首を反らす。ごん、と鈍い音を立てて後頭部が壁に当たった。 「たつぼん、気持ち良くする。絶対、気持ち良くするためだけに、する。な、だから、許して?」 「あっ、あっ・・ぁん。おま・・っずる・・・いぃ」 それを承諾と受け取って、シゲはまた水野の股間に顔を戻して、手での奉仕は続けながら、水野のズボンのファスナーを口を使って下ろした。 ジジ・・・という、手で下ろすよりも酷く緩慢な音がして思わず見下ろせば、ファスナーを下ろしかけているシゲが水野を見上げてにやりと笑った。 「・・・っ」 耳元まで血が巡るのが分かる。器用に口でファスナーを下ろしきったシゲは、次にまだ残る下着に視線を落として、くすりと笑う。 「これ、は俺のやないなぁ?」 「ば・・かっ。いう、な・・!」 水野の下着は既に濡れていた。いくらなんでもそれがシゲの唾液などではないことは一目瞭然で、シゲは羞恥の余り脚を閉じようとする水野の両脚を腕で押さえつけた。 「ここでやめたら辛いんはたつぼんやろ?」 手が塞がったのでシゲは再び舌でそこを突付く。途端にじゅく・・とまた布が濡れて、水野の噛み締めた唇から声が漏れ出た。 「はぁぁ・・んっ」 そのまま先端に布を押し込むようにして舌で押すと、水野は口元を手で覆って激しく頭を振る。 「・・っ、っ、・・・ぅ・・うっ」 あの時、屋上で今のようにシゲに口でされたときも、水野はその初めての快感に感じたが、あのシゲの愛撫がどれだけ機械的だったのか、今嫌でも分かってしまった。 「は・・っあ・・っ、あ、あっ、や・・く・・っ」 水野がもう脚を閉じようとする気配が無いのを察して、シゲは指も水野の性器に添える。手の平で熱く濡れた布を揉むようにすると、水野が指の隙間から細く甲高い声で啼いた。 「うー・・、っん!」 その声に鼓膜を刺激され、シゲは布ごと先端を咥えると、股の隙間から指を差し入れて水野の根元二つのまろみを握りこんだ。 「・・・・!?くぁ・・っ」 柔々とそこを揉みしだくと、水野は上半身をくねらせて悶える。 こんな快感は知らなかった。腰にくる。熱くてだるくてもどかしい。 太股に当たるシゲの痛んだ金の髪にさえ、細胞が刺激されるみたいで、水野は上がりそうになる声を指を噛んで必死に耐える。 シゲは確かに水野を気持ち要するためだけに専念するらしいが、凶暴なまでの激しい快感に、まだまだ初心者の水野は目尻から涙を零した。 「つらい?たつぼん・・」 「う・・んっ・・・、も、で・・・・ぅ」 どうしようもなく込み上げてくる射精感を持て余して、水野は腰を突き上げるようにして悶える。 「たつぼん、腰、そのままもう少し上げてくれへん・・?」 「・・っう・・」 激しすぎる快感のせいか思うように動いてくれない身体を何とか動かして、水野は僅かに腰を浮かせる。するとシゲは膝にわだかまっていたズボンと一緒に水野の下着を完全に取り去った。 「はぁ・・んっ」 突然性器が外気に触れ、水野は甘ったるい声を上げる。 「ちょ、我慢してな・・・」 シゲは、完全に瞳を潤ませてシゲの表情もおそらく判別できなくなっているだろう水野に優しく笑いかけて、そして水野の性器の根元を少し強く握りこんだ。 「・・・やぁ・・っ?なんで・・・!」 後ほんの少しの刺激で達せそうだった水野は、そのシゲの行動に非難めいた声を上げた。 「ちょお、ごめんなぁ」 シゲは申し訳無さそうに言うと、水野の腰を抱えて、床に引き倒した。 「・・・った!」 「すまん・・っ」 剥き出しになった腰が畳みに擦れて、思わず眉をしかめた水野に、シゲはいささか大袈裟なくらい慌てた。その覗き込んでくる表情が意外で、水野は少し正気を取り戻す。 すると、視界の端に敷きっぱなしのシゲの布団が眼に入った。 「シ、ゲ・・・」 ここまできて、シゲにストップをかけるのは悪い気がする。以前と違い、今のシゲの愛撫は本当に優しいから、水野も止めて欲しいとは思わなかった。 けれど、よく考えればその場に布団があるのに、何故自分たちは畳みの上でしようとしているのだろう・・。 水野が泳がせた視線の意味を察したのか、シゲもそちらにちらりと視線をやってから、少し考え込む仕草を見せた。 「んー・・・」 確かに、このままは痛いかもしれない、畳の跡も付くかもしれない。シゲにだって、それくらい考える理性はまだ残っていた。 けれど、同時にやはり隠しきれない悪戯心も沸いてきて。 「駄目、このまましようや」 「なんで・・・っ、あぁっ」 抗議の声を上げる水野の性器に、ふぅっと息を吹きかけて身を捩ろうとする抵抗を塞ぐ。 「畳の跡つけたい。コンクリートの跡の上から、畳の跡付けたいねん。あれ、数えへんでな。これが、最初。俺がたつぼんを愛した証拠。な?」 依然張り詰める水野の性器の側で、まるでそれに囁きかけるように吐息をかけるシゲに、水野は言ってやりたい文句を奪われる。 「そこで・・っしゃべ・・なぁ・・・!」 勝手な言い分に怒りが沸いてくるより先に、シゲが再開した愛撫によって熱が沸いてくる。 「あっ、あぅ・・っも、ほんとに・・・!」 水野の性器は限界まで張り詰めているのに、シゲの指は相変わらず根元に絡められて、水野は大量の先走りで性器をしとどに濡らしながらも、達せ無いもどかしさに、ついにすすり泣き始めた。 もういい。どこでもいい。畳の上でも布団でもいいから、開放して欲しい。 「おねが、おねがい・・っ、シゲ・・・ぇ」 水野が懇願するように腰を突き出せば、シゲは苦味の残る唇をぺろりと舐める。 そして、そのまま水野の脚を抱え上げた。 「え・・・っ」 水野は涙の溜まった目を見開いた。シゲは水野の性器の根元を戒めたまま、水野秘孔に唇を寄せたのだ。 「なん・・・!?」 「痛いやろうから・・」 シゲは水野の脚を方に持ち上げると、水野の先走りを指で掬って秘孔に塗りつけ始めた。 「ひやぁ・・んっ」 ぬるぬるとしたその感触に水野が脚をばたつかせる。 「我慢してな・・・」 入り口に十分水野の先走りを潤滑剤代わりに塗りこめて、シゲはそこに指を一本差し込んだ。 「ああぁぁぁ・・・ぅっ」 性器が完全に張り詰めて、脳が快感に支配されているためか、水野のそこは存外あっさりとシゲの指を受け入れた。 「あっ、あっ・・っ。や・・っ。変・・・」 シゲの指が入り口辺りを行き来すると、排泄間にも似た感覚が背筋を這い上がるが、それにしては甘い声が水野の鼻に掛かる。 シゲは軽く出し入れさせる指に、舌を添えた。 「え・・っ、うそ・・!シゲ!!汚い・・・・っ」 「きゃっか、や」 指よりも生々しい他人の体温とぬめりを感じて、水野は腰を大きく揺らしたが、それと同時にシゲの指を秘孔が締め上げることになり、シゲを煽ることしかしなかった。 「くっあ、や・・だっぁ・・・!ひぃ・・・う」 「良さそうやん・・・。ほら、まだ入る・・」 シゲは入り口をこじ開けるようにして舌を差し入れながら、指をもっと奥まで進める。根元を締め付けていた指も、その役割を愛撫に変えて、水野の内股は汗や先走りやシゲの唾液で濡れていく。 「ふぅ・・・んっ、やあぁ・・っ」 屋上で乱暴に慣らされた時は恐怖しか感じなかったというのに、ぐしゅぐしゅと音を立てて秘孔を舐め上げられ、いつの間にか増やされた指で中を広げるようにされ、性器先端に爪を立てられると、シゲの肩に乗せられた水野の足にシゲを引き寄せるように、力が篭もる。 「シゲ・・ぇ。も、ほんと、に・・・!」 「うん、ええよ・・・」 シゲの指が殊更水野の奥を抉った。 「ーーーーーー!!」 結局一度も開放されていなかった水野は、白い喉を大きく反らせて遂に果ててしまった。 「は・・ああぁあぁ・・・ぅ」 散々焦らされたせいか、長く吐精する水野の性器はぴくぴくと震えて、水野の身体全体が弛緩する。 「ええ、かな・・・?」 シゲは独り言のように呟くと、水野の脚を肩から腰の辺りに下ろさせると、自分のズボンの中ですっかり猛りきっていた自身を引き出して、水野の秘孔にあてがった。 エッチシーン二分割って、快挙だな・・・。(そうか? |